ストレンジャー・シングス⁉ 太平洋ゴミベルトで遠泳中に発見された“浮遊生物”

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長距離スイマーのブノワ・ルコント(Benoit Lecomte、通称「ベン(Ben)」)のおかげで、太平洋ゴミベルトに、風変わりだが素晴らしい野生生物が数多く生息していることが明らかになった。

ルコントは2019年6月、世界初の太平洋横断の遠泳「ボルテックス・スイム(Vortex Swim)」に出発。同行したクルーは、環流(広域にわたる、環のような流れ)を進むルコントの経路を記録するとともに、海水からサンプルを採取した。

ゴミベルトの中心部にたどり着いたとき、彼らが目にしたのは驚くべきものだった。そこにはプラスチック片が浮いているだけでなく、「水表生物(ニューストン:neuston)」と呼ばれる各種の浮遊生物が密集していたのだ。

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長距離スイマーのブノワ・ルコント

ルコントとクルーの発見は、ノースカロライナ大学アッシュビル校で生物学を研究するアシスタント・プロフェッサー、レベッカ・ヘルム(Rebecca Helm)によって記録されてきた。ヘルムは、長いTwitterスレッドに記録をまとめているほか、2022年4月26日付で掲載された査読前の論文の共同執筆者でもある。

ヘルムはTwitterで、カツオノエボシ(別名、電気クラゲ)とアオミノウミウシの画像を投稿した。アオミノウミウシは、有毒のカツオノエボシを食べると、それを鎧のように身に着ける。

「捕食者であるアオミノウミウシは、カツオノエボシを食べ、その刺胞(袋状で、中にある刺針・刺糸が刺激にあうと飛び出し、毒液を発射する器官)を盗みます。打ち負かした獲物の武器で作った鎧を体にまとうのです」とヘルムは説明した。

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【動画】まるでストレンジャー・シングス⁉ な浮遊生物

さらにヘルムは、共食いをするとされるアサガオガイ(violet snail)、ギンカクラゲ、そして帆のような器官を持ち、風に乗って海流を移動するクラゲの一種「カツオノカンムリ」の画像も公開した。

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生物とゴミの量に関係性

ヘルムとその研究チームは、こうした驚くべき海洋生物種を記録に残しつつ、太平洋ゴミベルトの中心部に、さらに多くの生物が生息していることを発見した。

「浮遊生物は、北太平洋ゴミベルトの周辺部より中心部の内側のほうで密集しており、生物の量とプラスチックゴミの量には関係性があることがわかりました」

さらに研究者たちは、プラスチックゴミの量が多い他の海域にも、同じような生物の生態系が存在する可能性があるという仮説を立てた。

「私たちの発見は、亜熱帯循環(各大洋の亜熱帯域に存在する高気圧性の循環)などのプラスチック密度の高い海域が、単なるゴミベルトではない可能性を示唆しています。まだ気づかれていない、水表生物が多数生息する海の存在は、地域的な生態系や、生態系の公益的機能(生態系に由来する、人類の利益になる機能)に影響を持ちうるものです。さらに、国際的な政策や生物多様性の保護にも影響を与える可能性があります」

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プラスチックが海に流れ出る前に止めなくてはならない

これを念頭に置き、ヘルムは、巨大な網で海水中のプラスチックを取り除くというプロジェクト「オーシャン・クリーンアップ」に疑問を呈している。こうした繁栄する生態系を荒らす恐れがあるからだ。

「ですから、プラスチックが海に流れ出る前に止めなくてはならないのです(中略)巨大な網を使い、海の真ん中でごみを取り除くというオーシャン・クリーンアップは良いアイデアに思えるかもしれませんが、ビニール袋を片付けたいだけなのに、ブルドーザーで牧草地を耕してしまうようなものです。網に生物たちがかかってしまうでしょうし、実のところ、そういうことがすでに起こっているのです」と、ヘルムはTwitterで発信した。

「私は2019年1月に、オーシャン・クリーンアップが海の浮遊生物を捕まえて殺してしまうだろうと警告しました」とヘルムは続けた。「2019年10月、彼らはプラスチックを回収していると発表しましたが、彼らの写真には、プラスチックに捕らわれた多数の浮遊動物が写っています(赤い丸を参照のこと)」

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オーシャン・クリーンアップによる画像に、ヘルムが水表生物を明確にするために赤丸をつけたもの

ブノワ・ルコントの遠泳がもたらした学問的な成果をまとめた論文はこちら

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※この記事はdesignboomからの提供です。

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