初代ウルトラヒロインが経験した、"初めてづくし"の特撮現場。いまも語り継がれる伝説のシーンを振り返る

  • 文:高野智宏
  • 画像提供:円谷プロダクション

Share:

  • Line

現在、大ヒット上映中の映画『シン・ウルトラマン』。その世界をより深く理解するためにも、オリジナルのテレビ版「ウルトラマン」を改めてチェックしておきたい。作品に華を添えたのが、新しい時代の女性像を示すかのように凛とした魅力を放ったヒロインだ。シリーズの原点「ウルトラQ」と、それに続く「ウルトラマン」の初代ヒロインを務めた桜井浩子さんに、当時の話を訊いた。

TKS-1.jpg
桜井浩子●1946年、東京都生まれ。中学卒業後に東宝へ入社。61年に女優デビューし、『お姐ちゃん三代記』などに出演。66年に「ウルトラQ」「ウルトラマン」でヒロインを務める。以降、女優活動と並行し、円谷プロのコーディネーターとしても活躍する。

試行錯誤を繰り返した、カラー番組の制作舞台裏

1966年1月から放送が開始され、空前の怪獣ブームを巻き起こした伝説の空想特撮番組「ウルトラQ」で新聞記者の江戸川由利子役として出演。続く「ウルトラマン」でも科学特捜隊のフジ・アキコ隊員を演じ、2作続けてシリーズのヒロイン役を務めた“初代ウルトラヒロイン”の桜井浩子さん。

「所属していた東宝からオーディションに行かされたのが、当時できたばかりの円谷特技プロダクション。東宝撮影所の片隅にある建物で、監督の円谷一(はじめ)さんや梶田興治さんたちに面接してもらいました。17歳の頃です。後日、一さんになぜ私が選ばれたのかを聞いたことがあるんですが、その時の一さんの答えは『ロコはすっぴんにGパン姿だったからな』って(笑)。考えてみれば、オーディションにそんな格好で行く女優なんていないだろうし、逆にそういうところが天真爛漫で行動的なキャラクターの江戸川由利子にマッチしたのかもしれませんね」

日本における特撮黎明期の記念碑的作品である「ウルトラQ」。その撮影では、実際にはいない、または見えない“モノ”に驚き恐怖する、「東宝の養成所でも習わなかった」特撮ならではの演技に苦労したと桜井さんは振り返る。だが、円谷プロ初のカラー番組となった「ウルトラマン」でも、またしても“初めてづくし”ならではの苦労もあったと苦笑する。

「実際の色がどんな風に映るのかカラーテストをするのですが、当時は基準がなく真っ赤に塗ったヤカンなどを使ってテストしていました。また、口紅など女性は男性より色彩の要素が多いでしょ。だから、私自身をカラーパターンにされちゃって(笑)。特に髪なんて『黒髪だと額縁みたいに映るから』と、2回も脱色させられました。確か、3日間くらいかけてカラーテストしていましたね」

さらに桜井さんを悩ませたのは、科学特捜隊のユニフォームだ。「スキーウエアの素材で伸縮性はあるんですが、ぴったりしすぎて身体のラインが出ちゃうのが恥ずかしかったですね。でも、私以上にキャップ役の小林昭二さんら男性陣から不評でしたね。だって、オレンジ色なんて当時の男性が着る色じゃないし、ズボンもぴったりくっついちゃっているから股間あたりが恥ずかしいんですって。でもね、なによりマムシ(毒蝮三太夫)さんは、あの格好が似合っていなかったですね(笑)」

02_UM_fuji_akiko_s600.jpg
モノクロだった「ウルトラQ」に対し、「ウルトラマン」の企画案でポイントとなったのが、カラーでの制作だった。科学特捜隊のユニフォームも、当時のカラー受像機での発色を考慮してアラートオレンジが採用された。桜井さんは「実は、素材が厚くて動きづらかった」と懐かしそうに振り返る。

---fadeinPager---

台本を読んで思わず涙を流した放送回とは?

TKS-2.jpg
「とにかくヘルメットと銃が重くって!」と、桜井さんは苦笑する。

そんな特撮黎明期に、かつテレビにカラーが導入された初期作品に携われたことを「とても貴重な体験で楽しかった」と振り返る桜井さん。しかしそれは演者というより「スタッフの一員としてね」と微笑む。

「特撮という新しい表現方法に挑戦した作品だっただけに、スタッフさんと一緒につくりあげるという感覚がとても楽しかったんです。実際、私も現場でメイク道具などを運んでいましたから。スタッフ数も多くないし、演者と技術班も分け隔てなく、スタッフ総出の現場だった。私も裏方のほうが性に合っているんですよ」と、屈託なく笑う。その後、女優活動と平行し、イベントや出版物のコーディネーターとして円谷プロダクションで活躍されたことを考えれば、その言葉にも納得がいくというものだろう。

桜井さんに「ウルトラマン」で最も思い出深い回はなにかと聞くと、答えは瞬時に帰ってきた。

「第23話の『故郷は宇宙』、ジャミラの回です。本当に素晴らしいストーリーで、台本を読んで思わず泣いてしまいました。ジャミラという怪獣はもともとは人間で宇宙飛行士だったのですが、宇宙船が事故に合って水のない惑星に不時着してしまい、その環境に適合するために怪獣に変化してしまった。そして、自分を見捨てた地球に復讐するために……、というストーリーなのです。最後にイデ隊員(二瓶正也)が『人間のエゴだ!』と吐き捨てるのですが、あんなに二瓶ちゃんが格好いい役者だなんて、その時まで思わなかった。見直しちゃいましたね(笑)」

加えて「ウルトラマン」への姿勢を正したのが、いまなお伝説として語り継がれる特撮シーンだ。

「ある日、録音用のアフレコルームで、バルタン星人の分身のシーンを観せてもらったのですが、その初めて観る映像に、出演者のみんなが度肝を抜かれていたんです。呆然としていると、科特隊のキャップ役の小林昭二さんから、『こんなに素晴らしい映像が上がってきてるんだ。俺たちも子ども向けの番組だからって馬鹿にしないで、しっかりやろうな』と言われ、気持ちが引き締まりました」

「ウルトラQ」の放送開始から半世紀以上を経て、いまなお続くウルトラマンシリーズ。そして、シリーズごとにヒロインが設定され、なかにはひし美ゆり子や石田えり、満島ひかりなどのビッグネームも輩出してきた。初代ヒロインを務めた桜井さんに、その心境を聞いた。

「ここまでシリーズが続くと、さすがに背負うものの重さを感じています。これまで女優、そして裏方としてシリーズに携わってきて、飯島敏宏監督をはじめ多くの方からいろいろなことを教えていただいたし、たくさんの思い出をつくることができました。いつまでやれるかわかりませんが、YouTubeチャンネル『ROCO TALK』やTwitterで、そうした思い出からのエピソードを紹介していくのも、初代ヒロインに託された宿題かなと思っています」

05_UM_fuji_akiko_s600.jpg
50年以上続くシリーズの初代ヒロインについて「ここまで続くと、背負うものを感じます」と桜井さん。

---fadeinPager---

桜井浩子写真集が復刊!

初代ウルトラヒロインを務めた桜井浩子さんの初となる写真集が、6月下旬に復刊ドットコムより発売。「ウルトラQ」「ウルトラマン」のほか、『怪獣大作戦』など1960年代の円谷作品に出演した際の名ショットや、撮影合間の貴重なオフショットなども掲載。その他、雑誌モデルとして活躍した少女期のカットなど、100ページを超えるボリュームで桜井浩子さんの魅力を堪能できる写真集だ。

04_UQ_Yuriko_600.jpg
Fuji Akiko_ illustration_credit_450.jpg
フジ・アキコ隊員を敬愛する漫画家・矢吹健太朗の描き下ろし「フジ・アキコ隊員イメージイラスト」も特別収録!
桜井浩子写真集書影UPver_RGB.jpg

『桜井浩子写真集 act ULTRA』
復刊ドットコム ¥5,940(6月下旬発売予定)

円谷プロ作品がウルトラ見放題!

桜井浩子さんが出演する「ウルトラQ」や「ウルトラマン」などを観たいと思ったら、円谷プロの公式サブスクリプションサービス「TSUBURAYA IMAGINATION」がお薦め。新旧ウルトラマンシリーズのほか、オリジナルの新作やコミックス、小説なども見放題になる「スタンダード」プラン(月額¥550)でまずはお試しを。「プレミアム」プラン(年額¥21,780)は、「怪奇大作戦」や「マイティジャック」などの円谷作品が追加で見放題になるだけでなく、イベントへの招待や限定グッズの販売など特典も満載。映画『シン・ウルトラマン』の特別映像など、無料で視聴できるコンテンツも! https://imagination.m-78.jp

TI.jpg

関連記事

初代ウルトラヒロインが経験した、"初めてづくし"の特撮現場。いまも語り継がれる伝説のシーンを振り返る

  • 文:高野智宏
  • 画像提供:円谷プロダクション

Share:

  • Line

Hot Keywords