【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第150回 “傑作RPG『エルデンリング』のような黄金律、自分の体重さえ気になる、軽量スーパースポーツ”

  • 写真&文:青木雄介

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サーキットモデル「ロングテール」の名を冠した765LTスパイダー。車重は1388㎏と驚異的な軽さ。ダウンフォースも720Sより25%向上している。

マクラーレン、スーパーカーセグメントの旗艦モデル「765 LTスパイダー」。「720S」をベースに走行性能を突きつめたハードコアモデルにして、サーキット走行を意識したロングテイル(LT)という名を冠する。世界で限定765台の販売となる。

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ブレーキング時に跳ね上がるアクティブ・リヤ・ウイングによって抜群の安定感をもたらす。

乗ってみるとスーパースポーツであるマクラーレン720Sの研ぎ澄まされた走行性能に「まだ先があった」ことをつくづく感じさせられる。細部の仕立てのよさをキープしつつ、エアロダイナミズムの造形の美しさが際立ち、乗り心地はよりハードになってマクラーレンらしさがとてもよく高められた1台と言えるはず。

このリリシズムの中心にあるのは、F1グランプリに他ならない。ダーク・ファンタジーRPGの傑作『エルデンリング』よろしく「フレーム」「エアロダイナミズム」「パワーユニット」「ブレーキ」の4つのステータスを強化し、720Sスパイダーより80㎏軽量化された。さしずめエルデの王となるべく鍛え抜かれた孤高の剣士。その走りはほぼヴァーチャルなフォーミュラマシンといった体でマクラーレンの理想をはっきりと示している。

峠では特に軽くて強じんなバスタブ型フレームの特性が前面に表れてくるのね。路面に張りつくように走る感覚とともにわずかな舵角で鋭く曲がる、スーパーフラットなハンドリング特性が際立つ。フレームの骨太な感覚はマクラーレンの特徴だけど765LTスパイダーにおいては研ぎ澄まされることで、凛としていて神々しくもある。エンジンもブレーキもエアロダイナミズムもフレームにかしずく。エルデンリングのリングのように黄金律のいちばん上の場所にフレームがあるわけ。

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サーキット走行時はスリムディスプレイモードでドライビングに集中できる。

ステアリングインフォメーションは路面の荒れや段差、エンジンの鼓動を伝えてくるものの、解像度は絞られていて、フレームとの一体感を促している。この一体感は繊細な踏力で自在にコントロールできるアクセルやブレーキのレスポンスにも貫かれていて一切無駄がない。安定した姿勢を保つのにエアロダイナミズムが調和する。そしてリングをつなぐ四位一体を実現するため軽量化が貫かれ、もはや同乗者はいらない。

765LTスパイダーとの純粋な交歓を行うなら、載せてよいのは「ドライバーの体重のみ」という世界なんだ(笑)。ただそれは純粋な速度を求めるというだけではない。自分の身体を拡張する装置としての同期が強すぎて自分の体重さえ気になってくるような感覚。サーキットでなくとも、公道で左側を走っていたとしても頭から離れない鮮烈な感触になってしまうんだ。

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限定765台のシリアルプレート。000はテストカーを指す。 

アクセルを踏み込めばロードノイズとともにはね上げた小石がタイヤハウスに鋭い音をたてて響き渡る。ダイレクトな段差の衝撃をものともせず、強力なダウンフォースを得ながら車体は一気に加速していく。エルデンリングでいえば超軽量化装備のラスボス討伐仕様。4連のチタンマフラーから聴こえる排気音もワイルドな低音で、ルーフを開けてオープンで体感できる疾走感は唯一無二。王座にいたる4つのステータスが輝く、まさに「イングランドの覇道」って感じですよ。

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4本出しチタン製エキゾーストエンドは好戦的な雰囲気を演出。

マクラーレン 765LT スパイダー

サイズ(全長×全幅×全高):4600×1930×1193㎜
排気量:3994cc
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
最高出力:765ps/7500rpm
最大トルク:800Nm/5500rpm
駆動方式:MR(ミッドシップ後輪駆動)
車両価格:¥49,500,000
問い合わせ先/マクラーレン・オートモーティブ
https://cars.mclaren.com

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※この記事はPen 2022年6月号より再編集した記事です。

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  • 写真&文:青木雄介

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