【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第148回 “リビングにいながら移動をしている気分になる、 北欧製トラックが旅人にかける魔法とは?”

  • 写真&文:青木雄介

Share:

新型FHはトラクターだけでなく8年ぶりに単車(リジット)もラインアップ。

ボルボトラックの大型シリーズである新型「FH」の販売が始まった。もうすぐ上陸30年になるボルボトラックだけど、希少な外国車というブランドイメージに加え、安全と低燃費のイメージはまったく変わらない。

2-IMG_20220202_145456_Wondershare_Wondershare.jpg
カメラで路面の状況を読み取り、思いのままに操舵できる「ボルボ・ダイナミック・ステアリング」も装備。

まず、乗り込んでボルボらしさを感じるところは陽が差し込む天窓と、ウォークスルーで歩きまわれる開放的なキャビンにある。プライベートスペースにこだわるボルボの乗用車と同様に、シンプルで温かみのあるスカンジナビアデザイン。豊富な収納スペースとともに快適に過ごせる工夫が、そこかしこに凝らされているのね。

多くのドライバーはこのキャビンにTVモニターを設置し、オプションの冷蔵庫を取り付けてさながら自分の城のように仕立てあげる。音楽好きならギターを飾ってロックっぽいテイストもいいし、スポーツファンなら好きなチームのグッズで車内を埋めつくすのも自由。長距離運行ともなれば旅が仕事なのだから、長い時間を自分本位で過ごすためのスペース確保が大切になってくる。クルマの上位グレードの名前が「グローブトロッター(世界を旅する人)」なのも納得のキャビンなんだな。

運転席からの視点は国産大型トラックよりさらに1段高くて、公道を走る運転席の最頂。なんでもお見通しの状態にあって、文字通り至高のクルーズ。エンジン振動は抑えられ、圧倒的な静粛性もあるから、自分が大型トラックを運転しているのを忘れてしまうほど。とはいえ、大型トレーラーの醍醐味はGCW(連結総重量)で最大36 トンもの重量物をけん引する本来の仕事にある。

3-IMG_20220202_141418.jpg
液晶化されたメーターパネルには各種インフォメーションが表示される。

峠越えにおいて、通常のトレーラーならシャシーは悲鳴をあげエンジンは重量挙げ選手の掛け声のようにレッドゾーンで唸りをあげる。ゆっくり坂を上がっていくトレーラーは、はた目からは平和そうに見えるけど、ドライバーは出力を落とさないようにアクセルをベタ踏みにしつつ勾配に合わせてシフトチェンジに必死。牽引する荷物の重量と限られたトルクとのせめぎ合いで、勾配の急な峠を越えた時は、なにものにも代えがたい充足感を感じるものなんだ。

新型FHは、ほとんど出だしで2300Nmもの最大トルクをはじき出せる13ℓのエンジンがあり、世界最高峰と断言したい12段自動変速「I(アイ)シフト」が重量と勾配に応じた出力を制御する。ほとんどシフトショックを感じさせず、間断なく下から湧き上がってくるトルクは総重量36トンになってもまさに「余裕」のひと言。まぁ、ついエンジンの叫びが聴きたくなって、シフトダウンしてレッドゾーンに入れるかもしれないけど(笑)。このクルマにその必要はない。

4-IMG_20220202_141242.jpg
アルコアのホイールサイズは前が315で後ろは295。リアエアサスが標準だが新型はフルエアサスも選択できる。

キャブ(頭)サスペンションにシートサスペンションが連動する乗り心地はお釈迦さまの手の平にいるよう。まさに天上天下唯我独尊の心持ちですよ(笑)。

ボルボFHは、トラックドライバーの仕事に寄りそう。「世界を旅してください。その旅の安全と快適性は我々が提供します」って感じでね。

映画『ロード・オブ・ザ・リング』でいえば、旅人の守護者である魔法使い「白のガンダルフ」って感じかな。

5-IMG_20220202_141518.jpg
定評のサスペンション付きシート。車体と連動し疲れない姿勢を保つ。

ボルボ FH 4×2トラクター

サイズ(全長×全幅×全高):6045×2490×3750㎝
排気量:12777cc
エンジン:直列6気筒ターボ
最高出力:460ps/1400-1800rpm
最大トルク:2300Nm/900-1400rpm
駆動方式:後1軸駆動(4×2)
車両価格:¥24,750,000
問い合わせ先/ボルボ・トラック南関東
TEL:044-333-5656
www.volvotrucks.jp

関連記事

※この記事はPen 2022年5月号より再編集した記事です。