映画『Ribbon』のあらすじと見どころ。のんが初の劇場公開作品で脚本・監督・主演を務める

  • 文:上村真徹

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©「Ribbon」フィルムパートナーズ

のんが脚本・監督・主演を務めた映画『Ribbon』の見どころやあらすじを紹介する。

【あらすじ】コロナ禍で“大切なもの”を奪われた美大生が未来へと踏み出す

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新型コロナウイルス感染拡大の影響で大学の卒業制作展が中止となってしまい、美大生いつかは自分の作品を自宅に持ち帰る。©「Ribbon」フィルムパートナーズ

幅広い分野でクリエイティブな才能を発揮し、YouTube配信のオリジナル映画『おちをつけなんせ』で監督デビューを果たしたのんが、今度は劇場公開の長編映画を初監督。企画・脚本・主演も兼任し、アジア最大規模の映画祭・上海国際映画祭でGALA部門に選出された注目作『Ribbon』が、2月25日から劇場公開される。

2020年。突然起きた新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆる人たちの生活に大きな影響を及ぼした。美大生いつか(のん)が通う大学の卒業制作展も中止となり、学生たちは1年間かけて制作した作品を持ち帰ったり、持って帰れない学生はそのまま捨てせざるを得なくなる。いろいろな負の感情が渦巻いて何も手につかなくなったいつかは、心配してくれるけ両親とも衝突してしまう。妹のまい(小野花梨)もコロナに過剰反応し、普段は冷静な親友の平井(山下リオ)もイライラを募らせている。

モヤモヤした日々の中で「これではいけない」と気づいた彼女は、絵を描くことに夢中になったきっかけをくれた友人との再会や、平井と本音をぶつけ合うことをきっかけに、自分の未来を切り開こうと立ち上がる。

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【キャスト&スタッフ】自分や多くの人の無念を晴らすため、のんが企画・脚本・監督・主演に挑戦

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卒業制作展が中止になったことで学生たちはイライラしたり無力感に襲われ、いつかと親友・平井(左)の関係もギクシャクしていく。©「Ribbon」フィルムパートナーズ

のんが本作の製作を企画したのは、コロナ禍真っただ中の2020年、彼女の主催する音楽フェスが開催直前に中止せざるを得なくなったことがきっかけ。1度目の緊急事態宣言による自粛期間を過ごしながら、音楽や映画、舞台などのエンタメや芸術の優先順位が下がっていくのをひしひしと感じたというのんは、「自分は見てきたエンタメや音楽やアートによって支えられている」ということに気づき、いてもたってもいられず脚本執筆をスタート。

作品の主人公を美大生に決めたのんは、コロナ禍の美大生たちの状況を調べる中で、卒業制作にまつわる記事を発見。そこに書かれてあった「時間をかけて作ったものがゴミのように思えてしまった」という言葉に共鳴し、彼らの無念を何とか晴らしたいという思いを胸に脚本を書き進め、美大生がアイデンティティを自らの手に取り戻す作品へと仕上げた。

そんな“のんの分身”とも言える主人公いつかを取り巻くキャラクターを演じるのは、出演ドラマ・監督映画・音楽フェスなどを通じて、のんと縁が生まれた俳優たち。主人公にとって憧れのかっこいい親友・平井を魅力的に演じる山下リオ。公園で何度も出会う不思議な男をファンタジックに魅せる渡辺大知。親子の絶妙な関係を素朴に好演する菅原大吉と春木みさよ。妹役には小野花梨。一人ひとりがのんのイメージに応え、キャラクターに鮮やかな生命感を宿している。

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【見どころ】のんのまっすぐな思いが、コロナ禍に生きる人たちを救う“再生の物語”

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登場人物の心情と共鳴したリボンアートが、特撮によってシーンに描き込まれている。©「Ribbon」フィルムパートナーズ

のんが本作でスポットライトを当てているのは、一度過ぎてしまったらもう戻れない青春や、自己表現の術とその発表の場を奪われてしまった美大生の無念と葛藤。コロナ禍の影響でさまざまなジャンルの大会やイベントが中止となっている中、主人公いつかのように日ごろの活動の成果を見せられなくなった学生や社会人たちは数知れない。そういう意味で、のんらしいポジティブなメッセージが込められた本作は、世の中に広く蔓延する無念の“救い”と“癒し”になりうる再生の物語と言えよう。

そして本作は、作品誕生のいきさつや製作現場における役割が示すように、のんが構想したコンセプトが純度100%に具現化されたもので、至る所に彼女のこだわりが詰まっている。登場人物のさまざまな感情の流れが、『シン・ゴジラ』の監督・特技監督の樋口真嗣と准監督・特技統括の尾上克郎による特撮リボンアートで表現されているのも彼女のアイデア。のんの映画に懸ける情熱が大物クリエイターと共鳴して完成した、時に鋭く尖り、時にしなやかに踊るようなリボンの動きは必見だ。

「コロナ禍で擦り切れた思いを、少しでもすくい上げるような作品を撮りたい」。そんなのんのまっすぐな思いがピュアに凝縮された本作は、苦難の時代を生きる者すべての心をそっと優しく揺さぶることだろう。

『Ribbon』

監督/のん
出演/のん、山下リオほか 2021年 日本映画
1時間55分 2月25日(金)よりテアトル新宿ほかロードショー

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