映画『ウエスト・サイド・ストーリー』のあらすじと見どころ。伝説のミュージカルがスピルバーグの手で蘇る!

  • 文:上村真徹

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© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

巨匠スティーブン・スピルバーグが伝説のミュージカルを映画化した『ウエスト・サイド・ストーリー』の見どころやあらすじを紹介する。

【あらすじ】人種の壁を越えた禁断の恋が、若者たちの運命を大きく変える

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ポーランド系移民チーム「ジェッツ」とプエルトリコ系移民チーム「シャークス」が激しく対立し合う中、それぞれのグループに属するトニーとマリアが禁断の恋に落ちる。© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

1957年にブロードウェイで初演されるやロングランヒットを記録し、1961年には映画化されアカデミー賞10部門に輝いた人気ミュージカル『ウエスト・サイド物語』。シェイクスピア戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台を現代のニューヨークに置き換え、さらに当時の社会背景を踏まえた“人種間の対立”というテーマを加えることで、20世紀を代表する悲恋のドラマへと生まれ変わった。この不朽の名作をスティーブン・スピルバーグ監督が21世紀に再生させ、第79回ゴールデングローブ賞で作品賞・主演女優賞・助演女優賞に輝いた『ウエスト・サイド・ストーリー』が2月11日から劇場公開される。

1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドでは多くの移民たちが夢や自由を求めていた。しかし彼らに対する社会の差別や偏見は厳しく、若者たちは同胞の仲間と集団を結成。各グループの間で対立が生まれ、特にポーランド系移民チーム「ジェッツ」とプエルトリコ系移民チーム「シャークス」は激しく敵対し合っていく。

そんなある夜、「ジェッツ」の元リーダーでいまは店で働いているトニー(アンセル・エルゴート)は、現リーダーのリフに誘われてダンスパーティに参加する。そこで彼は、「シャークス」のリーダーであるベルナルドの妹マリア(レイチェル・ゼグラー)と出会い、互いに一瞬で惹かれ合う。この禁断の恋は周囲の反対をよそに深まっていき、やがて2人だけでなく多くの人々の運命をも変えていく。

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【キャスト&スタッフ】『ウエスト・サイド物語』を愛する巨匠スピルバーグが念願の映画化

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スティーブン・スピルバーグ監督(右)は1961年の映画版の出演者リタ・モレノ(左)をキャスト兼エグゼクティブ・プロデューサーとして招いた。© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『ウエスト・サイド物語』の再映画化と聞くと“1961年の映画版をリメイクしたもの”と思いがちだが、スピルバーグ監督は本作のことを「1957年のブロードウェイ・ミュージカルに基づく物語」と明言。「『ウエスト・サイド物語』はうちのファミリーが初めて許したポピュラー音楽だった。レコードを10歳の時に聴いて以来、頭から離れない」と語るほど思い入れのある作品で、完成時には「私のキャリアの集大成」とまで言いきっている。

現代版「ロミオとジュリエット」というべき禁断の恋を織りなすトニーとマリアを演じるのは、『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴートと、約3万人のオーディションから選ばれた新人女優レイチェル・ゼグラー。共に歌とダンスを吹替えなしで熱演していて、特に本作でゴールデングローブ主演女優賞に輝いたゼグラーの瑞々しい魅力は必見だ。なお、1961年の映画版でアカデミー賞助演女優賞を受賞したリタ・モレノが、トニーの働く店の主人として出演。さらにエグゼクティブ・プロデューサーも務め、物語の精神を若手俳優たちに継承している。

本作はその他のスタッフも充実していて、脚本はトニー賞・ピューリッツァー賞受賞歴のあるトニー・クシュナー、振付は現代アメリカのダンス界をけん引するトニー賞受賞のジャスティン・ペック。さらに、ダイナミックかつ情熱的な指揮で全世界を魅了する名指揮者グスターボ・ドゥダメルが、オーケストラスコアのレコーディング指揮を務めている。

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【見どころ】21世紀の分断社会に訴える「ひとつになれない世界に愛し合える場所はあるのか?」という問い

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プエルトリコ系移民「シャークス」のメンバーが、異なる場所で育った人々が集う地“アメリカ”を褒めたたえる楽曲「America」に合わせて踊る。© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

本作の見どころは何と言っても、若者たちの情熱が込められた、躍動的かつ華やかな歌とダンス。レナード・バーンスタイン(作曲)とスティーブン・ソンドハイム(作詞)の最強タッグが手掛けた至高の愛の歌「Somewhere」と「Tonight」はいま聴いてもロマンティックだし、アップテンポなダンスナンバー「Mambo」と「America」は若者たちが身にまとう衣装の色彩美と相まってその迫力に圧倒される。

そうしたミュージカルとしての胸躍る魅力だけでなく、元ネタの「ロミオとジュリオット」から継承された「異なる立場を越えて、私たちは手を取り合えるのか?」というメッセージも本作の重要なテーマ。スピルバーグ監督は「1957年のシャークスとジェッツの分断よりも、私たちが直面している社会の分断の方が深刻であることに、5年をかけた脚本づくりの過程で気づいた。人々の分断は広がり、もはや人種間の隔たりは一部の人の問題ではなくなった」と語っているが、これこそ本作が60年以上の時を経て映画化された大きな理由であり、現代に蘇った意義だ。“現代社会の写し鏡”でもある社会の分断によって阻まれるトニーとマリアの純愛は、その切なさで見る者の胸をかきむしると同時に、障壁に立ち向かう2人の姿を通じて確かな問題提起にもなっている。

素晴らしい歌とダンスと音楽が満載で、現代人が向き合うべき社会問題を提起する、まさにスピルバーグ監督にしか作れないミュージカル映画。いまの時代に生きる人たちが見るべき社会派エンターテインメントがここにある。

『ウエスト・サイド・ストーリー』

監督/スティーブン・スピルバーグ
出演/アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラーほか 2021年 アメリカ映画
2時間37分 2月11日(金)より全国ロードショー

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