ピート・ヘイン・エークの世界観にどっぷりと浸れるデザインホテルが誕生!

  • 写真&文:ユイキヨミ

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フィリップス社の工場をリノベーションした自社ビル内に、直営ホテルをオープンしたピート・ヘイン・エーク

廃材を再利用した家具「スクラップ・ウッド」シリーズは、プロダクトデザイナー、ピート・ヘイン・エークの代表作。その誕生から30周年を迎えた今年、彼は自社の建物の中に全13室の直営ホテルをオープンした。

ピートの拠点は、アイントホーフェン市にある元フィリップス社の工場。かつてテレビやラジオの部品を製造していた面積10000平方メートルの大きな建物を自社ビルとして、オフィスやアトリエ、家具製作所、セレクトショップ、カフェレストラン、そしてショールームやギャラリーをも併設し、プロダクトにまつわる全機能を集結している。新しくできたホテルの客室は、その最上階に並ぶ。

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先鋭アーティストらの作品で彩られた各客室には、ピート作のプロダクトがずらり。ベッドやランプなどの調度品はもちろん、電気のスイッチやドアノブ、タオルを掛けるフックに至るまで全てピートのデザインだ。そのロブストな作風と、1950年代のインダストリアルな建築様式が織りなす、硬質なポエムのようなピート・ワールドにどっぷりと浸れるデザインホテルである。

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「スクラップ・ウッド」の大ヒット以来、“リサイクル”のイメージが定着したピート。だが、その真のデザイン理念は「自然環境に呼応しながら、サステイナブルに暮らしていた古の先人たちがそうしてきたように、自分が使うことを許された限られた素材を、ていねいに賢く使ってモノをつくること。そしてそれを大切に使ってもらうこと」だと言う。そんな彼は、誰が、何を、どのように作っているのかを知ってもらうことも重要だと考えており、約100人の従業員が働く社屋内の各スペースの仕切りはガラス張りに。自室で図面を引くピートの姿から、プロダクトが生まれる製作所の様子まで、理念がプロダクトへと具現化する臨場感あるプロセスがパブリックスペースから一望できる造りになっている。デザインファン、そしてクリエイティブ産業に携わる多くの人をインスパイアするこの刺激的なものづくりの場を、泊まりがけでゆっくりと堪能してみたい。

https://hotelpietheineek.nl/nl/

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