当代最高のドラマー、ネイト・スミスが生み出すビート&グルーヴと心震わすメロディ

  • 文:山澤健治

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1974年、米バージニア州生まれ。デイヴ・ホランド、クリス・ポッター、パット・メセニー、ホセ・ジェイムズなど、国内外での共演・参加作は膨大な数におよぶ超絶ドラマー。新作は、2017年のキンフォーク3部作第1弾の続編。

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人が音楽を聴き、そこにグルーヴを感じるのは、ビートのタイム感に微妙なゆらぎが生じているからだと言われる。ゆらめく時を鼓動で刻む、母親の心音に安心して眠りにつく胎児の記憶がそうさせるのか。プログラミング全盛の現代もなお、生身の人間が生み出すビートに魅了される所以だろう。

16ビートを自在に操り、現代最高峰ドラマーのひとりに数えられる、ネイト・スミス。彼のビートとグルーヴを求め、これまで数多くの音楽家がラヴコールを送ってきた。人気はジャズ界隈だけに留まらず、ポール・サイモンや布袋寅泰が彼の名演を作品に収録。人気ミニマル・ファンク・バンド、ヴルフペックの別動隊ユニット、フィアレス・フライヤーズの一員として、キックとスネア、ハイハットだけの最少ドラムキットで叩き出すファンキーなビートもまた、彼の実力と人間が生み出すグルーヴの魅力を再認識させることとなった。

そんな稀代のグルーヴ・マスターには、優れた作曲家/プロデューサーとしての顔も存在する。マイケル・ジャクソンのスロージャム「Heaven Can Wait」が彼の共作曲だと知れば、音楽家としてのトータルな才能に気づくだろう。

新作『キンフォーク2:シー・ザ・バーズ』は、まさに彼の才能が余すところなく発揮された作品となっている。切れ味鋭いドラミングが下支えをするジャズ・ナンバーに流麗なソウル曲、躍動感あふれるヒップホップ、ヴァーノン・リードのギター・リフが唸るプログレ・ロック・チューンなど剛柔取り揃えた内容で、スティングのカバー曲を除き、すべてネイトの書き下ろし曲で網羅されている。

ヴィブラフォン奏者のジョエル・ロス他、ジャズの俊英が共演するジャズ曲はどれも聴きどころなのだが、歌モノがまた白眉。とりわけアラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワードが歌うブルージーなラストには心震えることだろう。

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『キンフォーク2:シー・ザ・バーズ』ネイト・スミス PCD-25335 Pヴァイン ¥2,750

NATE SMITH + KINFOLK "SEE THE BIRDS (feat Michael Mayo + Joel Ross)"

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