謎の料理「インド煮」とは? 『おいしい給食 season2』6話レビュー

  • 文:絶対に終電を逃さない女

Share:

©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女による、ドラマ『おいしい給食 season2』全話レビュー連載。今回は第6話「南から来た謎の献立」を振り返る。

甘利田は朝からその日の献立である謎の料理「インド煮」に頭を悩ませていた。午前の授業は、学校近くの公園の清掃。青年団の工藤の指導のもと、甘利田と神野を含むグループは花壇の草むしりに取りかかる。が、工藤がお手本として抜いてみせた草はよく見ると朝顔だ。朝顔を抜いていいのか尋ねる甘利田に、工藤は「大丈夫でしょ」と適当な返答。その根拠を聞かれても「私、勘が冴えてますから」「不確かなものは、勘でやるしかないでしょう」と、「勘」の一点張り。

朝顔は脇に置き、ベンチでひとりインド煮への思いを馳せる甘利田。その間に、芽を出したばかりだった朝顔はすべて抜かれてしまい、後からやって来た青年団の女性たちは激怒する。「どーしてくれんのよ! 責任取りなさいよ!」と4人の女性から同時に詰め寄られる工藤は、さながら4股がバレたプレイボーイのようである。

頼りない勘のせいで失敗した工藤を反面教師にした甘利田は、彼なりに考えた結果、インド煮とは「その不思議さ故に、神秘の国・インドの名を冠した煮物」であると推測し、その不思議さとは「真夏にあえておでんを出すこと」、つまりインド煮とはおでんである、という答えを導き出す。甘利田は自信満々だが、正直全然意味がわからない。

---fadeinPager---

「インド煮」の正体は?

一方の神野は、受験ガイダンスでの「具体的に計画を立てる」という指導に対し、「何でも計画通りになるとは限らないと思います。計画して、予想通りになるのもいいけど、そうじゃないから面白いというのもあるんじゃないかと思いました」と、お得意の一理あるようなないような絶妙な発言をして宗方先生とクラスメイトを困惑させる。

神野のこうした言動は、給食バトルへの伏線だ。すかさず甘利田はインド煮のことかと察し、「未知のメニューに無駄な詮索は不要とでも言いたいのか。馬鹿め。大人はきちんと計画を立て、未来予想図を描くのだ。行き当たりばったりの無鉄砲が許されるのは、子どもだけだ」と心の中で説教をする。お決まりの大人マウントである。

ところが蓋を開けてみれば、インド煮とは、豚肉、ジャガイモ、にんじん、こんにゃく、さつま揚げ、うずらの卵、インゲンをカレー風味に煮込んだだけの料理だった。

「インド、イコール、カレーだからか? そんな短絡的なことだったのか? それは一番最初に思ったことじゃないかああ!!」と、深読みし過ぎたことを激しく後悔する甘利田。そう、なんでも予想通りとはいかないのだ。とはいえ、単なるカレー煮であっても美味しいはずだと気を取り直し、「まるで宝石箱のようだ」と彦摩呂風の食レポを挟みながらインド煮を楽しむ。コッペパンを煮汁に浸せばまるでナン、牛乳と合わせればあたかもラッシー。最初の落胆が嘘のようにすっかりインドに染まっていたのだった。

---fadeinPager---

予想が外れた時に、どう対応するか

続いて神野のターン。神野は竹串にインド煮の具を刺し、カレーおでん串をせっせと作っていた。なんと、神野も甘利田と同じく「おでん」を予想していたのだ。それほど熱くないのにフーフーし、口に入れて熱がる神野。インド煮という、カレーとおでんの中間のような料理が、一本の串に貫かれおでんになる。前話の冷やし中華で形の重要性に気付いた神野は、さらなる進歩を見せつけた。

「奴は予想に反していたにもかかわらず、諦めなかった。外れたおでん予想を自らおでんを作ることで当たりに変えてしまった。自分が信じたインド煮を最後まで信じ切った」「それに比べて、私は……予想が違っていたショックで落ち込み、落ち込みを取り戻すために給食を楽しんで、予想なんてなかったことにしてしまった」

なんでも予想通りとはいかないからこそ面白い。甘利田とは違い、予想が外れたことをむしろ楽しむような柔軟さが神野にはあった。宗方先生や甘利田の言う通り、未来を予想し計画を立てることはもちろん大切だ。しかし、予想が外れた時にどう対応するかも同じくらい大切なのではないか。甘利田のように予想なんてなかったことにするのも悪くないかもしれないが、神野のように自分の選択を正解にしていく努力も忘れてはならない。そんな人生訓めいたものを受け取ってしまうのは、深読みのしすぎだろうか。

7話_sub2.jpg
第7話の放送(テレビ神奈川)は11/24(水)21時からスタート ©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。

Twitter: @YPFiGtH
note: https://note.mu/syudengirl

連載記事

第1話:知るぞ人ぞ知る名作ドラマ、『おいしい給食 season2』がスタート! その魅力について
第2話:筑前煮の魅力は「ごった煮のダイナミズム」。『おいしい給食 season2』第2話レビュー
第3話:アメリカンな献立を、あのヒット商品の如くアレンジ! 『おいしい給食 season2』3話レビュー
第4話:教師・甘利田が、神野に勝てない理由。『おいしい給食 season2』4話レビュー
第5話:冷やし中華を通じて、食文化の本質に迫る。『おいしい給食 season2』5話レビュー

---fadeinPager---