教師・甘利田が、神野に勝てない理由。『おいしい給食 season2』4話レビュー

  • 文:絶対に終電を逃さない女

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©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女による、ドラマ『おいしい給食 season2』全話レビュー連載。今回は第4話「クリーミー三兄弟とお楽しみ会」を振り返る。

ノートに給食の絵を描いている神野のところへ、クラスメイトの俵さんが「いつも何描いてるの?」と尋ねてくる。いわゆる"陰キャ"が言われがちな台詞だ。まあ神野は陰キャというわけでもなさそうなのだが……。

「何かが足らない気がして」と今日の給食アレンジに悩む神野。「よくわかんないけど、足らないなら、どっかから持ってくればいいんじゃない。自分でどうにもできなかったら周りを頼れって、お父さんいつも言ってる」という俵さんの適当な助言から、何かを閃く。

午前中、甘利田が担当する数学の授業。黒板に解答を書く神野は、2次方程式なのに唐突に「2+1=3」と書き、甘利田を惑わせる。甘利田のみならず、クラス中から奇異の視線は免れられなかっただろう。

悶々としながら給食に向かう甘利田。献立はマカロニグラタン、ポテトコロッケ、フルーツサラダ、食パン、マーガリン、牛乳。やけに乳製品の多い献立だなと思うが、甘利田は食パンで皿に残ったグラタンとフルーツサラダの汁を綺麗にこそげとる。ここは3話のチョコバーのようにベロベロに舐めとってほしかったところだが。それは流石に大人としてやらなかったのだろう。「変態は、お断りだよ」という駄菓子屋の店主の言葉が、瞬時に彼の本能にブレーキをかけたに違いない。

ここで甘利田は神野の給食アレンジを予想する。「コロッケと食パンでコロッケパンを作ってくるのはほぼ間違いないだろう」「マカロニもサラダも一緒に挟もうとしているのか。だから三つ巴の3がアンサーなのか。それらは別々にあるからこそ別々のクリーミーさが味わえるんだよ。所詮はこ・ど・も」

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甘利田の「敗因」とは?

所感だが、甘利田は生徒を過剰に子ども扱いするところがある。1話で生徒のマイ箸と自らの輪島漆塗り箸を比べての、「お前らのようなプラスティック製の子どもの箸ではないのだ。私は大人」、3話でアメリカンドッグを真っ先に食べた神野に対する、「子どもっぽくてよろしいね」など、事あるごとに生徒(特に神野)を「子ども」という枠に嵌め、自分のことを「大人」だと確認したがっているように見える。給食が好きな自分は子どもっぽいのではないか、というコンプレックスの裏返しなのだろうか。これこそが今回の甘利田の敗因だった。

「どうせ子どもだから幼稚な考えで食事を台無しにするだろうと、願望のまま高を括った」「本当は私もサンドにしたかったんだ」「でも奴がやることを、大人の私がやるなんてという変なプライドがそれをさせなかった。何というちっぽけな、つまらない感情で、給食を蔑ろにしたのだ」

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©2021「おいしい給食」製作委員会

3話で当たったおかわり券を使い、食パンを一枚おかわりした神野は、コロッケ、マカロニグラタン、フルーツサラダ、それぞれ三種類のサンドウィッチを作ったのだった。

最後には、家の食事より給食が好きだという神野に心のなかで「激しく同意」する甘利田。はたして80年代の大人が「激しく同意」などという現代的な言い回しをしていたかどうかはともかく、教師・甘利田は、本当は神野に親近感を抱きつつ、フルーツバスケットの輪に入ってしまいたかった童心を意識の外へ追いやる。

「私は給食が家の食事の100倍好きな教師。だが、そんなことは微塵も知られてはならない。だから奴のように思っていることをはっきりとぶつけることなんてできない。大人の教師として、私は断じて奴を認めるわけにはいかない」

本当は給食が好きだと言いたい甘利田は、大人・教師としての立場や威厳を確かめる。しかしそれこそが彼の最大のコンプレックスであり、神野に勝てない壁なのだ。

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第5話の放送(テレビ神奈川)は11/10(水)21時からスタート ©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。

Twitter: @YPFiGtH
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連載記事

第一話:知るぞ人ぞ知る名作ドラマ、『おいしい給食 season2』がスタート! その魅力について
第二話:筑前煮の魅力は「ごった煮のダイナミズム」。『おいしい給食 season2』第2話レビュー
第三話:アメリカンな献立を、あのヒット商品の如くアレンジ! 『おいしい給食 season2』3話レビュー

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