知るぞ人ぞ知る名作ドラマ、『おいしい給食 season2』がスタート! その魅力について

  • 文:絶対に終電を逃さない女

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©2021「おいしい給食」製作委員会

秋クールのドラマ一覧をチェックしていたところ、『おいしい給食 season2』に目が止まった。シリーズ化するということはそれだけ人気があるはずだが、まったく知らない。調べてみると、どうやらテレビ神奈川やTOKYO MXなどローカル局のみで放送されていたドラマのため、一般的な知名度は高くないものの、劇場版も制作されたくらい熱心なファンが多い作品であることがわかった。

気になってseason1を見てみたところ、あまりの面白さに衝撃を受け、一気に劇場版まで見てしまった。まず主演の市原隼人の演技が素晴らしい。昭和の夏の田舎を舞台に大人と学生がそれぞれユニークなアイデアによる攻防戦を繰り広げる、同じく市原隼人主演の映画『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(2008年)と似た系統と言っていいだろうか。

「給食のために学校に来ていると言っても過言ではない」と豪語するほどの給食好きの中学教師・甘利田は、基本的に生徒には厳しく接しているが、職員室ではこっそり献立表を眺めて過ごし、給食のことを考えるあまり、仕事はサボり気味。給食の前にはハイテンションで校歌を歌い、教卓で給食を楽しむ。

この給食を食べるシーンが毎話のメインなのだが、「教師が生徒以上に給食を楽しみにしているなどと知られたら、私の威厳は失墜する。なので、ただ心の奥底で、給食を愛するだけ」というスタンスのためモノローグ中心なのは、『孤独のグルメ』にも通ずるものがある。

season2の1話では、

「米飯界の静かなる実力者、わかめごはん。そしてサイドメニューは味覚のスナイパー、揚げ餃子。このツートップを無意識に編成してくる、善意の第三者、給食センター。これは否応なく盛り上がる」

などと心の中で給食批評を述べ、給食以外の時間の険しい表情が嘘のように、生まれたての我が子を見つめるような笑顔で揚げ餃子を眺め、デザートの大学芋にはキスをしてから口に入れる。台詞回しの上手さもさることながら、ギャグ漫画風味の大袈裟な所作の一つひとつがいちいち面白い。それでいてどこか品があって美しく、見ていて飽きない。

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ノスタルジックで切ない場面も

そんな甘利田と「どちらがより美味しく給食を食べられるか」の戦いを密かに繰り広げるのが、甘利田が受け持つクラスの生徒である、神野ゴウ(佐藤大志)。甘利田に負けない給食愛を持ち、コッペパンに鯨の竜田揚げをサンドして食べたり、理科室のアルコールランプでベビーチーズを溶かしてチーズフォンデュにしたりと、毎回独創的な給食アレンジを楽しむのが彼のスタイルだ。教師としての立場やしがらみに縛られながら与えられるがままに給食を享受する、いわば保守的な甘利田と、固定観念に囚われない柔軟な発想で給食をアレンジしたり、時には給食のシステムの改善を求めたりする、革新的な神野の対比が軸になっている。

甘利田の給食好きの理由は母親の料理が下手だったからだと明言されている一方、神野のそれは語られない。だが、授業参観や三者面談に親が来ない、劇場版では給食が廃止になった際に弁当を持ってきていないなど、家庭環境に恵まれていないことが窺える。そのような、給食から見える家庭環境の格差をさりげなく示唆する描写を随所に差し込むことによって、作品の深みが増しているように思う。

毎回安定して笑える一方、ノスタルジックで切なく、ホロリとするような場面もあり、劇場版にいたっては号泣してしまった。毎回給食メニューのルーツなどの解説があり、文学や美術作品の引用も多く、知的な側面もある。もちろん「給食あるある」を楽しむこともできる。season1は1984年、season2は1986年の設定のため、リアルタイム世代にはより懐かしいのではないだろうか。コメディとしてだけでなく、さまざまな角度から楽しめる作品だ。

先週放送された第1話は、劇場版で給食の廃止をめぐって教育委員会と揉めた末に給食のある中学校に異動した甘利田のクラスに、2年越しで神野が転校してくるところで終わる、いわばプロローグ的な内容だった。初見の人にとっては話についていけない部分もあったかもしれないが、season1と劇場版はアマゾンプライムビデオやU-NEXTなどで配信されているほか、今ならGYAO!で無料配信されている。2話から再び始まるであろう、彼らの笑って泣ける給食バトルを、共に最後まで見届けようではないか。

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第二話の放送(テレビ神奈川)は10/20(水)21時からスタート ©2021「おいしい給食」製作委員会
絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。

Twitter: @YPFiGtH
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