筑前煮の魅力は「ごった煮のダイナミズム」。『おいしい給食 season2』第2話レビュー

  • 文:絶対に終電を逃さない女

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©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女による、ドラマ『おいしい給食 season2』全話レビュー連載。今回は第2話を振り返る。第1話の最後で、甘利田のライバル・神野が転校してくるが…。

黒板に名前を書く神野を教卓から睨みつける甘利田。挨拶の途中で神野を「もういい」と牽制する教師らしからぬ甘利田。突如転校してきたかつてのライバル・神野に脅威を感じ挙動不審になる甘利田に、season1から見てきた者としてはニヤニヤが止まらない。

そんな甘利田に対し不敵な笑みを浮かべる、余裕綽々の神野。相変わらず給食大好きな神野は、クラスメイトに「得意なこと」を聞かれ、「食べること!」と即答。「え、大食いってこと?」と聞き返されても「食べることは食べることだよ」と答えてクラスメイトを困惑させる、一貫した姿勢に感心する。わかりやすい指標がないとなかなか得意だとは言えないものだと思うが、堂々と言い切る勇気が眩しい。

2時間目の歯科検診ではセクシーな歯科医が登場し、男子たちが浮き立つ中でも、神野はブレない。上の空で今日の給食のことを考え、何かを閃いた様子でノートに給食アレンジのアイデアを書き留める。

そしてついに給食の時間。戦いに負け続けた悔しさとは裏腹に、ライバルのいない給食に物足りなさを感じていたのであろう甘利田は、「給食ブランクのある転校したてのやつに負けるわけにはいかない!」と、恒例の校歌斉唱で拳を突き上げ、ロックフェスの最前さながらの盛り上がりを見せる。

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今回のメニューは「筑前煮」。二人の食べ方は?

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©2021「おいしい給食」製作委員会

2話の給食のメインは、筑前煮。まず牛乳瓶の蓋を開けようとした甘利田は焦りからか、誰もが一度は経験があるであろう、紙の蓋の表面だけめくれてしまう失敗をしでかす。それを見る神野の、勝ち誇った顔。この絶妙なドヤ顔をまた毎週見れると思うと楽しみで仕方がない。

気を取り直し、歯科検診での歯をカテゴライズして磨くという指導から着想を得た甘利田は、「寄せ集めてはいるが、具材一つ一つには個性がある。大人の嗜みとして、これらをカテゴライズして食べるのも一興なのではないか」と筑前煮の具材を分けて食べることで、おかずが増えたような感覚を楽しむ。

対して神野は、先割れスプーン2本を使いリズミカルに筑前煮の具材を刻み、ご飯に入れて混ぜるという、炊き込みご飯風アレンジで応戦。これ見よがしに口に運ぶ神野を見て、甘利田は「激しくうまそげじゃないかああ!!」と心の中で叫び、「筑前煮の筑前煮たるポリシーは、ごった煮のダイナミズムだということを私は忘れていたのか? 筑前煮の良さをむしろ消していた」と負けを認める。

プロローグ的な1話を経て、甘利田と神野の戦いが始まった2話は期待以上に面白く、終始笑いっぱなしだった。コメディとしての面白さは、season1よりもパワーアップしているのではないだろうか。

しかし給食バトル自体は、これまでと比べると小さくまとまっていたように思えてならなかった。体育教師に借りたプロテインシェイカーで牛乳とミルメークを混ぜたり、理科の実験で使ったイカを焼きそばに入れたりと、毎回予想のつかない創意工夫を凝らしてきた神野にしては、今回の筑前煮を刻んでご飯に混ぜるというアレンジは、シンプルすぎるのではないか。甘利田も緊張のせいか、牛乳瓶の蓋だけでなく、ふりかけの存在を忘れるなどの凡ミスが目立った。もしかしたら神野は、甘利田の戸惑いを察して手加減してあげたのかもしれない。いわばジャブのようなものだろう。次回以降、本領発揮してくれることを期待したい。

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第三話の放送(テレビ神奈川)は10/27(水)21時からスタート ©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。

Twitter: @YPFiGtH
note: https://note.mu/syudengirl

連載記事

第一話:知るぞ人ぞ知る名作ドラマ、『おいしい給食 season2』がスタート! その魅力について

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