2021年10月22日から31日にかけて、TOKYO ART BOOK FAIR(TABF) 2021がオンラインと東京都現代美術館の2会場で開催された。
新型コロナウイルス感染症予防対策のためバーチャル空間のみで開催された昨年の経験を活かし、今年は出展者と来場者が出会い交流しやすい場づくりを、オンライン・オフラインの双方で取り組んだという。

特に今回のTABF 2021を象徴する展示となったのが、「ART BOOK VENDING MACHINE」だ。海外で制作されたアートブックやZINE、作家になかなか出会えない現状を踏まえ、世界各国の出版物を一堂に集めながらオンラインとオフラインを行き来できる場を創出。今回はさまざまな国や地域から、42組が参加した。

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オフライン会場で注目した出展者たち

2年ぶりのオフライン開催では、出展者数と来場者数が制限され、さらに2時間15分ごとの入れ替え制。短い時間ではあったが、見て回る中で出展者との再会や新たな出会いがあった。

まず、1階のA SECTIONを見て回っていると、東京・西小山に拠点を構えるHand Saw Pressのブースを発見。リソグラフ印刷による味わい深いZINEやポスターが並ぶ。


また、グラフィックデザイナーのGUCCIMAZEと中屋辰平が主宰するZAも出展。
昨年刊行されたGUCCIMAZEの『MAZE BOOK』のほか、中屋辰平がデザインを手がけた写真集『鶴と亀 禄』、ラッパーでビートメイカーのJUBEEが立ち上げたRave Racersのラバーキーホルダーなど、通常はウェブストアのみで販売されているアイテムを手に取って見ることができた。

続いて地下2階へ。A SECTIONでは、TABFで毎回人気を集める平山昌尚(HIMAA)に出会えた。

2020年に刊行された星座をモチーフに描いた作品集『88 Constellations』をはじめ、シンプルでありながら、どこか均衡が崩れたような平山の作品たち。そこから滲み出る独特なユーモアは、ものごとを可笑しがる感覚をじわじわと引き出してくれる。

さらに会場内をまわっていると、DDAA LABの代表を務める建築家・元木大輔を発見。ブースに並ぶのは、昨年Instagramで発表したプロジェクト『Hackability of The Stool』の作品やアイデアスケッチなど。また、故・多木浩二の『建築のことばを探す 多木浩二の建築写真』など、建築ファンにはたまらない書籍も並んでいた。

最後にZ SECTIONへ。ここでは「おじさんスタンプ」の制作をライフワークにする、イラストレーターの大嶋奈都子に出会えた。

TABFの常連でもある大嶋。年々進化する彼女のスタンプを楽しみにするファンとして、嬉しい体験となった。
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TABF 2021で手に入れられたモノと体験

最後に、今回手に入れたアイテムを紹介しよう。ARTBOOK VENDING MACHINEでは、カタロニア人建築家のオスカー・トゥスケの作品集を購入。オスカー自身が長い間好んで使ってきたスケッチブックを模したユニークな装丁で、1970年代から現在までの製品スケッチが200点近く収録されている。巨匠の制作プロセスを知ることができる1冊だ。

1年に1度、出展者たちと直接交流できる点も、TABFの楽しみのひとつ。
気になる作家から作品についての解説を聞いたり、こちらから感想を伝えたりすることは、ZINEや書籍、グッズなど、モノ手に入れられる以上の体験としての価値がある。参加者はそれを、オンライン・オフラインの双方から改めて実感することができただろう。
はたして、来年はどのような開催形態になるのか。年々進化するTABFに、これからも目が離せない。
TOKYO ART BOOK FAIR 2021
オンライン会場アーカイブ
https://online.tokyoartbookfair.com/turnip/