ファッションの面白さは、その表現にこそ見出せるもの。服をデザインするのも、それをセンスよく組み合わせるのも、自分という存在や伝えたいメッセージを外の世界へと発信する行為だ。今回は、アーティスト・立石従寛に今季のコレクションから発想を広げてもらった。ジャンルを超えクロスオーバーする、魅惑のセッションをご堪能あれ。
#sustainablefashion

#genderlessfashion


#covidfashion

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プラトンのイデア論を、人工知能で現代に可視化する
立石従寛は、人工知能、写真、音楽などを用いて創作するアーティストだ。今回の企画では、ハッシュタグを集積して画像をつくり出す彼の代表作『その-それら』とファッションの融合を試みた。同作は哲学者プラトンによるイデア論を、現代の技術や現象を用いて思考するシリーズだ。
「イデア(idea)とは、ラテン語で『その=id』と『それら=ea』を組み合わせた単語で、ある概念とその概念の具象との関係を捉えます。SNS上のハッシュタグと、それにひも付けられたイメージ群はこの関係に近い。そこで、同一のタグが付いた画像群をAIで解析し、ひとつの画像に再構築することで、イデアを可視化できるのではと考えました」
作品は、いまのファッションをひも解く3つのハッシュタグで制作。「#sustainablefashion」では、森や海など自然の中で撮影された画像が多く集まり、完成した作品の背景は淡い水色になった。
「ナチュラルなヌードカラーを予想していたのですが、意外にカラフルでしたね。サステイナビリティに対する人々の意識が変わってきていると感じます」
同じタグを念頭にスタイリングを組んだモデルたちと作品とが共演した。「作品をモノとして馴染ませる撮影は経験がなく、即興的に舞台美術を行うかのようで刺激的でした」と新鮮なコラボを楽しんだようだ。
『その-それら』は社会的な作品だが、彼が手がける他の作品も、社会と結びついている。
「自分だけで終わらず、かつ自分しかできないことをする、が創作のモットーです。作者・鑑賞者・社会のそれぞれに物語があること・語れること、を意識して制作しています」
自身のファッション観について尋ねると、「私にとってファッションとは身体感覚を拡張させるデバイス。自分に最適な素材やサイズ、シルエット、色などがすべて揃ったら、裸の時以上にびしびし環境を取り込めるのではないでしょうか」と答えてくれた。
立石従寛

1986年、シカゴ生まれ。英国王立芸術学院首席修了。仮想と現実、自然と人工などの境界融和をテーマにAI、立体音響、身体表現を用いた作品を制作。代表作に『To The Fog』『Re: Incarnation』など。
※この記事はPen 2021年11月号「挑むモード、触発するアート」特集より再編集した記事です。