【らしく、美しく暮らす──。】Vol.2左官職人・久住有生が語る、落ち着いた大人の街「白金」の魅力

  • 写真:杉田裕一
  • 文:小久保敦郎

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日本を代表する左官職人として、国内外で活躍している久住有生さん。自然豊かな淡路島で生まれ育った久住さんにとって、東京は人や建物が多く、ときにしんどいと思うこともある場所。にもかかわらず、白金は落ち着いた気分で過ごせる「いい街」だという。白金との縁、そして魅力を聞いた。

東京の白金に2023年竣工予定の都市型タワーレジデンスを展開する、旭化成不動産レジデンス×ワールドレジデンシャル。コンセプトは「らしく、美しく」。この連載企画では、その地に縁のある方に登場いただき、この特別なエリアの文化的な背景と、街の魅力をひも解いていく。第2回は、世界的な左官職人である久住有生さんが語る「白金」。久住さんが白金によい印象をもったのは、たまたま界隈を散歩していた時。キーワードはバランスのよさだと言う。

都会の中心にありながらも、落ち着く街

久住有生(左官職人)●1972年、兵庫県淡路島生まれ。祖父の代から続く左官一家で、初めて鏝を握ったのは3歳の時。1995年、23歳で独立。重要文化財など歴史的価値の高い建築物の修復をはじめ、商業施設、個人邸などを多数手がける。日本の左官技術を広く伝えるべく、国内外でワークショップや講演会を積極的に開催。

久住さんが白金に「いい街だな」という印象を抱いたのは、いまから15年ほど前のこと。目黒と五反田の間にある、インドネシア大使館で仕事をしていた時だった。

「息抜きに散歩をしていて、試しに白金方面に足をのばしてみました。すると、東京だけど落ち着くな、という感覚があって。僕は淡路島出身で、ちょうど東京での仕事が増え始めた時期でした。でも、正直その頃はしんどかった。東京は人が多くて、つくられているものに圧迫感があって、窮屈な感じがして。白金はちょっと違いましたね。まず、歩いていると大きな植物がぱっと目に入ってくる。それから、職業柄新しいものより古いものを見るのが好きなのですけれど、路地に入ると昔の職人さんがつくった建物が残っていたりする。工事に通ったのは4カ月くらいかな。その間、時間があれば白金界隈をぶらぶらと歩くようになりました」

白金のメインストリートとして知られるプラチナ通り。イチョウ並木の濃い緑が目に優しく印象的。

やがて淡路島から拠点を移し、本格的に東京で活動を始めた久住さん。白金には、これまで仕事での縁もあったそう。街のランドマークのひとつである八芳園でも、左官職人としての腕を発揮している。

「レストラン槐樹の壁をつくらせていただきました。八芳園も美しい日本庭園がある素敵な場所ですね」

壁の素材やデザインを決める際、その場の空気感を大切にするのが久住流。

「左官で使う素材は実にさまざまで、仕上げ方も無限にあります。現場を見ると大きな窓があり、そこから庭園の木々を眺めることができ、その影が店内でゆらいでいる……。そんな場所でした。ここでは自然に近い感覚が合うと思い、すべて本物の土を使って仕上げたんです。土壁は強度が弱いのですけれど、八芳園には傷がついたら手直しをして長く大事に使い続ける伝統がある。だからこそ、できたことでもあります」

久住さんが壁を手がけた八芳園「槐樹」。インテリアは伝統的な和をベースにしつつ、モダンな雰囲気も取り入れている。写真提供:久住有生
強度を増すための表面加工をあえてせず、土本来の素材感を前面に出した壁。京都の東本願寺で手に入れた土を使用している。写真提供:久住有生

歩けば緑が目に入り、適度に昔の建物が残され、居心地よく感じる街。そんな白金で久住さんがこれまで何度も足を運んだ場所がある。東京都庭園美術館だ。

「もともとアールデコが好きで、東京都庭園美術館に惹かれていました。好きな作家であるルネ・ラリックの作品があるし、アンリ・ラパンが手がけたインテリアデザインもすごくいい。僕はデザインに困るということはないんですけれど、ちょっと刺激がほしい時にふらっと行って、建物の中をスケッチしたりするんです。庭園の散歩もすごく気持ちがいいですね。いろいろな植物に囲まれて歩きながら、アイデアを整理してみたり。淡路島では、当たり前にある森や海が気持ちを穏やかにしてくれたし、アイデアの源泉になったりしていた。白金はその代わりになるような場所なんです」

旧朝香宮邸として建てられ、迎賓館として利用されたこともある東京都庭園美術館。アールデコ様式を正確にとどめた希少な建築物だ。photo:東京都庭園美術館 / DNPartcom
館内の主要な部屋はフランス人芸術家であるアンリ・ラパンがデザイン。アールデコの工芸家として活躍したルネ・ラリック作のガラスレリーフやシャンデリアも当時のまま飾られている。photo:東京都庭園美術館 / DNPartcom

意外にも昔ながらの古い街並みが残っている

「いい街では磁場のようなものを感じます。白金に素敵な店が多いのは、自然に引き寄せられているからかもしれません」と久住さん。

久住さんには、白金でお気に入りの通りがあるという。街路樹のイチョウ並木が美しい白金のメインストリート「プラチナ通り」かと思いきや、さにあらず。

「恵比寿駅と白金高輪駅を結ぶ1本の道があるんです。恵比寿三丁目の交差点から白金高輪方面に向かって歩いてみると、通り沿いにはわりと古い建物が多い。古いといっても、たぶん戦後に建てられたものですね。昭和的な木造一軒家だったり、昔は商店だったと思われる家屋だったり。だから決して豪華な建築物ではないのですけれど、よく見るとちゃんとつくられていたりする。ああ、いい仕事してるな、なんて思いながらのんびり歩くわけです。建築に興味がない人には、変わった人に見えているかもしれませんね」

305号線沿いに立ち並ぶ古い建物。看板建築と呼ばれるレトロな街並みがどこかほっとさせる。
こちらもにも古い建物が。ちょうど白金5丁目、6丁目付近にあたる。

白金の魅力をひと言で表現すると「バランスのよさ」だと久住さんは言う。

「建物と緑のバランスがいいんです。街の中に東京都庭園美術館や八芳園、白金氷川神社などがあり、わりと大きな面積を占めている。僕が気持ちいいな、と感じる場所に共通しているのが、そのバランス感覚。磁場とか気の流れとかを生みやすいのかもしれません。開発されると街は変わり、好き嫌いの意見が分かれてしまう。もちろん白金にも新しいものが入ってくるけれど、あまりゆるがない芯の強さを感じます。東京は変化が早くて、それがいいところのひとつ。でも、住むところは落ち着けるとか安らげるとか、そういう感覚がいちばん大事だと思います。だから、白金は生活する場所に向いている。そう考えています」

大きく変わりゆく東京の中で、穏やかに変化する。そこにいること自体が、心地よい。そんな「白金らしさ」に久住さんは魅力を感じているようだ。

雷神山児童遊園までの緑道。気分転換に散歩するのにもちょうどいい。
大通りから奥に入ると緑豊かな小道があるのも特徴だ。

白金はグルメな人が集う街。久住さんが気になる飲食店はどこなのだろう。

「路地裏にあるフランツというレストランは好きですね。木造家屋をリノベした店で、だから白金の華やかなイメージとは少し違うのだけれど、隠れ家っぽくていい感じです。それから、プラチナ通りで数年前にオープンしたザ テンダーハウス ダイニング。どうしても建築に目がいってしまうのですけど、ファサードがいいんです。デザインの力を感じます」

立体型の格子が目を引くザ テンダーハウス ダイニングのファサード。デザインは建築家の小坂竜。石や木などの自然素材が周囲の環境に馴染む。
古民家で楽しめるフレンチ、フランツの店内。写真右側の壁は久住さんによる仕事だ。

もし、久住さんがプラチナ通りで一軒の建物を任されたらどうするか、聞いてみた。

「新しい建物ができたね、ではなく、これって前からあったっけ。見た人がそう思うような建物になるといいですね。都心でありながら、急激な変化にはさらされず少しずつ変化していく。白金は、そんな街だと感じています」

アトラスタワー白金レジデンシャル

所在地:東京都港区白金1-343-16(地番)
交通:東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪」駅徒歩3分
構造・規模:鉄筋コンクリート造、地上23階、地下1階
総戸数:94戸 ※非分譲住戸29戸、単独分譲住戸4戸含む
間取り:1DK~3LDK
専有面積:33.38~114.12㎡
竣工予定:2023年9月中旬(予定)

※掲載の情報は2022年3月現在のものです。専有面積や間取り、共用施設、スケジュールなどは、今後変更となる可能性があります。

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問い合わせ先/アトラスタワー白金レジデンシャル
TEL:0120-982-562
www.afr-web.co.jp/atlas/mansion/shirokane/concept/index.html/

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