英国スポーツの伝統を受け継ぐクリケットセーター【華麗なるギャツビー編】

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    英国スポーツの伝統を受け継ぐクリケットセーター【華麗なるギャツビー編】

    文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一

    生成りにネイビーのトリムが入ったクリケットセーター。素材はピュアメリノウール。英国の伝統的なスポーツの匂いを感じさせ、職人的な技術で編まれた逸品。アラン ペインの確かなヒストリーを象徴するセーターだ。¥28,600(税込)/アラン ペイン

    『華麗なるギャツビー』(74年)で、自邸の豪奢なパーティでニック(サム・ウォーターストン)と出会った主人公ギャツビー(ロバート・レッドフォード)は、翌日ニックとランチに出掛けた際にクルマのなかで自分の素性を明らかにする。

    「(アメリカの)中西部の金持ちの家に生まれた。アメリカ育ちだが、大学はオックスフォード。父の遺産を相続した」とギャツビーはニックに話す。

    ギャツビーはすべてが英国趣味だ。愛用するクルマも英国製のロールスロイス。服もすべてロンドンから取り寄せたものだ。貧しいころに別れたデイジー(ミア・フォロー)とニックの家で再会したギャツビーはその後も彼女と密会を繰り返すが、彼女と家で寛ぐときに着ていたのが白のケーブル編みのVネックセーター。ホワイトバックスの靴にストライプ入りの白パンツで、白のケーブル編みのセーターを着こなしていた。これもギャツビーの英国趣味のあらわれだろう。

    ギャツビー以外の周りの人物も多かれ少なかれ、英国の影響を受けている。デイジーの友人のジョーダン・ベーカー(ロイス・チャイルズ)はゴルファー。1920年代は女性がテニスやゴルフなどのスポーツを盛んにやるようになった時代だ。ジョーダンのモデルは、フィッツジェラルド(原作者)が大学時代に付き合っていた恋人の友人、エディス・カミングスともいわれる。

    そんなジョーダンがゴルフをプレイするシーンが前半に登場するが、彼女の周りの観客たちのなかにも、クリケットセーターを着用した人物が多くいる。その前の場面でも、白を基調としたニットを身に着けてテニスする人々が映し出される。この時代にそれが、アメリカにおいてもスポーツを行うときの正統的なスタイルであったことがよくわかる。

    アラン ペインは、1907年に英国で設立された歴史あるニット専業ブランドだ。創業者ウィリアム・ペインが倉庫にあったニッティングマシーンでセーターを編み始め、ケーブルセーターを学生たちに販売したのがこのブランドの始まりだ。大学、所属クラブのネクタイと合わせたカラーをネックのトリムに加えたセーターが、ボート、テニス、クリケットなどの選手たちの間で人気となり、アラン ペインの代名詞となるセーターへと成長した。

    まさにクリケットセーターの原型をデザインしたブランド、本物の英国スポーツ用としてのセーターではないか。物語の舞台は1920年代だから、これらのセーターがアメリカに渡り、当時の紳士淑女たちの間で着られていたことが想像できる。

    縄編み模様のケーブル編みは、ブランド創業当時からアラン ペインが得意としていた技術で、編み立ても美しい。

    ニットにスポーティなイメージを演出するストライプのトリム。これは同ブランドが学校や所属クラブのタイの色をトリムに加えたもので、当時の選手たちの間で大人気となったと言われる。

    1907年に英国のサリー州で創業された老舗。クリケットセーターの原型を産み出したことでも有名で、稀代の伊達男として知られたウィンザー公=エドワード8世もアラン ペインのセーターを愛用していた。

    問い合わせ先/真下商事 TEL.:03-6412-7081

    http://mashimo-tr.co.jp