本誌では書けなかった裏エピソード

カメラマンのテンションが、一番あがったのはココでした・・・。

担当:編集E
世界遺産名:富岡製糸場と絹産業遺産群

2014年に世界遺産リストに登録された富岡製糸場。比較的新しい話題とあって現在も観光客が跡を絶ちません。ロケハンに訪れたのは2015年11月。9時のオープンを目がけて続々と観光バスが到着し、あっという間に工場内の敷地は人で埋め尽くされていました。

本誌では、“明治時代の建築”に焦点をあてた話になっているのですが、じつは富岡製糸場って5.2haの広大な敷地とはいえ、見学できるところは限られているというのが現状です。本で読むと1日かけて工場内をまわるのかな? と思いがちですが、144年も前の建物は老朽化ももちろん進んでいますので、常にどこかしら工事をしていて、現在も西繭倉庫は全面改装工事中。すべてがきれいに並んだ状態で見られるのは30年以上先なんだとか。(建物の状態だって1日に何度も確認しているんです)  

今回、取材ができる特権ということで、通常見学できない場所にも入れていただく機会がありました。残念ながら掲載できなかったのですが、実はここがすごい!というところがありました。

それが、鉄水槽――。

江嶋 カメラマンのテンションが、一番あがったのはココでした・・・。

地味ではありますが、これ、そばで見るとすごい迫力でした。直径は15m、深さは2.4m。なんと400t(40万ℓ)の水が貯められます。これは、操糸用の水を備えるためにつくられた鉄製の水槽。当初使われていたのはレンガ積みの水槽ですが、水漏れに伴い、急遽横須賀製鉄所(横須賀造船所)が製造したのがこの鉄水槽です。加工された鉄板を富岡製糸場内に持ち込み、組み立てられたそうです。

江嶋 カメラマンのテンションが、一番あがったのはココでした・・・。

注目したいのは、造船技術であるリベット接合が用いられているところと、下部分の用いられた基礎石。長さ90㎝、幅・厚さは30㎝のもの石が水槽の外周に、内部には格子状に配置されています。当初2段でしたが、水圧をあげるためにのちに5段に積み立てられたのではないか、とも言われています。どうやって石を増やしたのかはいまだ調査中とのこと。興味深いです! とにかくこの鉄製の武骨な雰囲気とリベット接合という組み合わせがなんかモダンでやたら男っぽい!

気付くと後ろからカシャカシャと途切れることのないシャッター音が。私(女性)とカメラマン(女性)は、ぶっちゃけここが一番テンションがあがったのでした。

江嶋 カメラマンのテンションが、一番あがったのはココでした・・・。

おまけですが、この景色。ここは、製糸場のブリュナ館の裏庭から眺められる景色なんですが、前を流れるのは、鏑川、というそこそこ大きな川です。この日は天気もよく、光が川に反射してとても穏やかな雰囲気でした。明治政府は操糸場をどこにつくるか決める際、候補にあがっていた埼玉県や長野県も検討し、実際に現地を訪れています。富岡に決めた理由としては、養蚕地であること、また広大な敷地が確保できたこと。そして地元の人の賛同をえられたこと、というのが理由としてあげられていますが、設立指導者のポール・ブリュナが富岡からみたこの景色が、祖国であるフランスの風景に似ていたことも決め手となった、という説もあったとか。遠くには山、目の前には緩やかな川。なんとも癒されたひと時でした。