「パネライ」から驚異のミニッツリピーター登場、10分単位の「デシマル」で、2つの時間帯を鳴らすGMT搭載!

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    「パネライ」から驚異のミニッツリピーター登場、10分単位の「デシマル」で、2つの時間帯を鳴らすGMT搭載!

    文:笠木恵司

    時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房などの取材経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)

    8時位置の大きなボタンを押すことで、ミニッツリピーターが作動。音によって現在時間を教えてくれる。この場合はローカルタイム(LTのインジケーターが赤色)だが、第2時間帯のホームタイム(HT)にも連動できる世界初の機構を開発。

    エレガントなクッションケースでお馴染みのパネライでは、2002年にスイス・ヌーシャテルに工房を設置。様々なムーブメントや複雑機構などを自社開発してきましたが、これまで蓄積してきた技術力を集大成した1つの究極=頂点とも表現できるミニッツリピーターが登場しました。美しく澄んだ音色で時間を教えてくれるコンプリケーションですが、何から説明すべきか悩んでしまうほど複数の高度な技巧が導入されているのです。

    まず、一般的なミニッツリピーターは2つの音色の組み合わせで時間を告知します。ところが、この新作は時計の内部に配置された3本のリング(鐘)と、これを叩く3つのハンマーを備えており、3つの音色をメロディのように連続して奏でることから「カリヨン」とネーミングされています。

    それだけでなく、通常のミニッツリピーターは時間、15分、分の順にカウントするのですが、この新作では15分でなく、10分の単位を告知。そして、それこそが3連音になっているのです。

    8時位置のプッシュボタンを押すと、リピーターの駆動に必要なゼンマイが巻き上がり、たとえば最初にコン、コン、コンと3回鳴れば3時を意味します。続いてコンカンキン、コンカンキンと3連音のメロディが2回なら2×10分で20分。最後にキン、キン、キンなら3×1分で3分となり、時刻は3時23分ということです。10分単位の告知なので10進法=「デシマル」と呼ばれる希少な複雑機構ですが、15分単位より分かりやすいだけでなく、このミニッツリピーターのハイライトともいえる3連音を5回(50分の場合)まで堪能できる仕組みといえるかもしれません。

    さらに、このモデルは第2時間帯表示を備えたGMTであり、何とメイン表示のローカルタイム、またはホームタイムのいずれかを選んでミニッツリピーターを起動することができます。第2時間帯となるホームタイムは、センターの三角矢印付き針が表示。3時位置にもAM/PM表示付き24時間計が配置されていますが、リューズの簡単な操作でミニッツリピーターの連動先を変えることができ、9時位置にあるスモールセコンド下部の「HT」(ホームタイム)と「LT」(ローカルタイム)のインジケーターの赤色で確認することができます。ホームタイムに連動したGMTのミニッツリピーターは例がありますが、このように2つの時間帯を選択して起動できる機構は世界初です。

    また、ムーブメントはパネライ独自(特許取得)のトゥールビヨンを搭載。テンプが往復振動するケージが、その軸に平行して回転するのでなく、垂直方向に30秒で1回転します。10時位置のテンプケージが、こちらに向かって起き上がるように回転し、30秒後に元の位置に戻る仕組みです。

    こうした複雑機構が、洗練されたスケルトンでデザインされており、ダイヤル側から精緻なディテールをあますところなく見ることができます。にもかかわらず、主ゼンマイを収めた香箱を2つ備えたツインバレルで、約4日間のロングパワーリザーブ。オマケに30m防水と、実用性にも配慮していることがパネライらしい特徴といえるでしょう。

    軍用のダイバーズウォッチをルーツとするパネライにミニッツリピーターは違和感があるかもしれませんが、インスピレーションソースは大海原を航海する船に設置された「船鐘」だそうです。この鐘の音は、食事時間や勤務の終わりを船員に知らせるだけでなく、時には危険も知らせます。そうした航海に関する伝統や情熱を背景に持ったコンプリケーションなのです。

    価格は約4800万円で受注生産。納品まで2年程度の予定。待つことさえ楽しみになりそうな卓越したレアピースといえるでしょう。


    *音色はこちらで試聴できます。


    「パネライ」から驚異のミニッツリピーター登場、10分単位の「デシマル」で、2つの時間帯を鳴らすGMT搭載!

    ケースバックもスケルトン。ブラックのブリッジと軸受けのルビーの赤色が印象的なコントラスト。右上側には、回転を始めたパネライ独自(特許取得)のトゥールビヨンが見える。水平でなく垂直方向に30秒で1回転する。

    手巻き、18Kレッドゴールド、ケース径49㎜、ツインバレルでパワーリザーブ約4日間、ケースバックに残量表示、GMT12/24時間表示、現地時間(LT=ローカルタイム)と第2時間帯(HT=ホームタイム)に連動するミニッツリピーター(時、10分、分)、30m防水、アリゲーター・ストラップ。¥48,000,000(受注生産)
    問い合わせ先/オフィチーネ パネライ Tel:0120-18-7110
    www.panerai.com
    アドリアーノ・トニネリ

    今回のコメント

    アドリアーノ・トニネリ

    オフィチーネ パネライ トレーニングマネージャー

    イタリアブランドであるパネライが、ついに世界初の第二時間帯まで音で知らせることが可能なミニッツリピーターを完成させました。音色はパネライが所有する1936年建造のクラシックヨット、アイリーン号が出港する時に鳴らす鐘の音をイメージしています。

    元プロボクサー、元ダンサーという異色の経歴をもつ時計技師。スイスのパネライ マニュファクチュールで時計技師達のトレーニングを統括している。今回はミニッツリピーターと共に来日。4800万円の音色を聴かせてくれた。