日本車のヴィンテージを語るときに欠かせないメーカーといえば「日産自動車」だろう。戦前の「フェートン」からレーシングカー「R91CP」まで7台の「伝説の名車」を紹介する。今回は“無敵”のツーリングカー、「スカイラインGT-R」が登場。
国内だけでなく海外でも圧倒的だった「進撃のツーリングカー」
国内ツーリングカーレースの最高峰 グループAカテゴリーにおいて、29連勝という金字塔を打ち立てた「スカイラインGT-R」。その快進撃は1990年に始まった。市販車は89年から日本国内でのみ販売、正式には輸出されなかったが、実は国内だけでなく海外のレースでもその強さを見せつけている。ここで紹介するグループA仕様は、ル・マン、デイトナとともに世界三大24時間レースとして知られるスパ・フランコルシャン24時間レース(通称:スパ24時間)において、91年に総合優勝を果たした25号車を再現したマシンだ。
GT-Rの強さの秘密は、その出自にある。戦いの晴れ舞台、グループAクラスは、許される改造範囲が狭いためベース車両の基本性能が重視された。そこで運動性能を追求したR32型スカイラインを骨格にして、勝つための先進技術が、市販モデルの段階から盛り込まれたのである。
本場の耐久レースで、21周もの大差をつけた。
まずはRB26DETT型エンジン。2.6リットルという排気量はグループAのクラス規定に合わせたもの。
当時のレースの規則では、ターボチャージャーなど過給機付きエンジンの場合、排気量の1.7倍の係数を掛けた排気量が総排気量になり、4.5リットルクラスに照準を定めたGT-Rのエンジンは、そこから導き出された「2.6リットル」が市販車の排気量にもなったのである。そして、ツーリングカーレースにフルタイム4WDシステム「ATTESA E-TS」をもち込んだことも新しい。後輪駆動をベースにしながら、走行状況に応じて前後輪に伝える駆動力の配分を変化させる電子制御を採用。4WDならではのトラクションとコーナリング時の曲がりやすさを両立させ、コントロール性も向上させるシステムは市販車にも有効だ。
こうしてグループAカテゴリーに狙いを合わせ誕生したGT-Rは、国内レース参戦と並行して海外での挑戦も進められた。ベルギーで開催されるスパ24時間については、90年からの3年計画で始動。1年目はデータ収集を目的にほぼ無改造のグループN仕様で戦ったが、いきなりクラス1~3位を独占してしまう。
続く91年はいよいよグループAマシンを投入。結果はポール・トゥ・ウイン、しかも2位に21周の大差をつけての圧倒的な勝利で、さらにグループNクラスにおいても2連覇を決めた。最後の参戦となる92年は、ピット作業中のアクシデントでリタイヤに終わったが、実は4WDのGT-Rには90kgものウェイトハンデが課されていたのだ。GT-R潰しとも受け取れるこの新規則からも、この年の勝利が本場欧州のモータースポーツに与えた衝撃の大きさがうかがえるのである。
こちらの記事は、Vマガジン Vol.02「世界に誇る名ヴィンテージ こんな日本車を知っているか?」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから。