複雑機構を搭載した、日本製機械式時計の矜持。

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    ORIENT STARオリエントスター

    複雑機構を搭載した、日本製機械式時計の矜持。

    岩崎 寛(STASH)・写真
    photographs by Hiroshi Iwasaki
    並木浩一・文
    text by Koichi Namiki

    「オリエントスター」は初代が半世紀以上前に遡る、国産ブランドの大名跡だ。その〝ニューライン〞の新作から、目が離せない。オリエントスターとしては初めての、ムーンフェイズ機構を装備したのである。

    そもそもオリエントは、創設時から機械式を強みとしてきた。主力ムーブメント「46(ヨンロク)系」は昭和46年から続く、エバーラスティングな銘品。さらにポインター式のデイト表示で結界し、内側にオンリーワンの月齢表示を置いた。

    12時位置に置かれたパワーリザーブ・インジケーターと、複雑ながらグラフィカルな月齢機構が拮抗する。9時方向には美しく仕上げた削り出しのパーツでバランスホイール部分を支持し、カットアウトから覗かせる〝セミ・スケルトン〞の仕掛け。3時側にはファッションの大御所メゾンがやるかのように、商品タイトルの頭文字から採られたOSマークを菱形紋様の地に連続させる。

    自信に満ちたフェイスだけでなく、精度は平均日差プラス15秒からマイナス5秒にまで追い込んだ。ケースのスチール素材は耐蝕性に優れた「316L」規格を採用、シースルーバックもサファイアに変更、風防は両球面サファイアの内側を無反射コーティング。シースルーバックからの眺めも一新され、くっきりとしたローターの地模様が入射光を視線の中で走らせ、スクリューヘッドの青、受け石のルビーレッドが映える。サムライ・マニュファクチュールの逸品は、高級時計の世界的デファクトスタンダードを網羅する。

    それでいてディテールは日本的にきめ細かく、針先の落とし込みのような、職人の誠意を感じる手作業も見える。本ワニ革を選りすぐり、革傷みの少ない三つ折れのクラスプも奢った。機械式ムーンフェイズだけでも国産の別選択肢がない、普段使いできる本格的な機械式時計。欧州車からの乗り換えが相次ぐ国産高級車のように、クオリティは標準を超えている。


    メカニカルムーンフェイズ

    自動巻き、SS、ケース径41㎜、ムーンフェイズ、パワーリザーブインジケーター(駆動40時間以上)、ポインター式日付、秒針停止装置、アリゲーター革ストラップ+三つ折れクラスプ、5気圧防水。¥183,600 ※ムーンフェイズ内の仕様変更あり。
    オリエント商品お客様相談室 TEL:042-847-3380