無数のスチールワイヤーで、優雅な構造を実現。

  • 文:佐藤早苗
  • 編集:山田泰巨

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Vol.65
無数のスチールワイヤーで、優雅な構造を実現。
プラットナーアームチェア

ウォーレン・プラットナー

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

ウォーレン・プラットナーが1966年に発表したラウンジファニチャーコレクションのひとつ「プラットナーラウンジチェア」。スチールワイヤーを使ったエレガントで彫刻的なフォルムは、アメリカモダンを代表するデザインアイコンのひとつです。

コレクションを代表する「ラウンジチェア」。彫刻的なスチールロッドが構造としての役割も担う。スチール部分の仕上げは、ポリッシュニッケル、メタリックブロンズ、ゴールドプレートの3種類から選択可能だ。サイズはW950×D650×H770×SH480mm

ウォーレン・プラットナーは、レイモンド・ローウィ、イオ・ミン・ペイ、エーロ・サーリネンと数々の著名な建築事務所で経験を積んだ建築家です。独立後はインテリアを中心に活躍しており、ニューヨークの「ジョージ・ジェンセン デザインセンター」、いまはなきワールドトレードセンターにあったレストラン「世界の窓」などの仕事で知られています。

そんな彼がデザインを手がけた「プラットナーチェア」と一連のシリーズは、1966年の発表以来途切れることなく生産されているロングセラーで、彼の名を世界に知らしめた代表作です。竹細工のような繊細さと彫刻的なフォルムが見事な椅子は、ゆるやかなカーブを描くフレームにそれぞれ角度や長さの異なる数百本ものスチールワイヤーを溶接してつくられています。製造工程は複雑で困難でしたが、ノル社がその製造工程を実現しました。無数のスチールワイヤーが束ねられた脚部や座面、背面は軽やかな印象ながら重量があり、座ると安定感があります。建築家が手がけた椅子らしく、ワイヤー部分は見た目に美しいだけでなく構造としても機能するもの。優雅でありながら合理的なコレクションには、プラットナーのデザインの本質が見て取れると言えるでしょう。

コレクションには、サイドテーブルやコーヒーテーブル、スツールなども。「ラウンジチェア」より一回り小ぶりな「サイドチェア」は、背もたれ部分にスチールワイヤーによる美しい構造が見えて軽やか。

こちらはゆったりと身体を包み込む「イージーチェア」と「オットマン」。ブラウンの生地とメタリックブロンズの組み合わせが、落ち着いた雰囲気です。