一本脚で自立する、世界で最初の椅子。
Vol.43
一本脚で自立する、世界で最初の椅子。
チューリップチェア

エーロ・サーリネン

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

アメリカのミッドセンチュリーを生きたフィンランド出身の建築家、エーロ・サーリネン。彼がデザインした「チューリップチェア」は度重なる研究を経て、1957年に誕生した名作椅子です。世界で初めての一本脚で自立する椅子の誕生の背景には彼の強いこだわりがありました。

床から垂直にすっと伸びる一本脚に、花びらのような一体成型のシェルがまさにチューリップを思わせます。サイズはW680×D590×H790×SH460mm

エーロ・サーリネンは、建築家のエリエル・サーリネンとテキスタイルアーティストのロハ・サーリネンを両親にもち、幼少期からデザインに囲まれて育ちました。名前こそフィンランド系ですが、アメリカの建築家として知られています。

エーロのデザインに北欧らしさは感じられず、いかにもミッドセンチュリーのアメリカを思わせる未来的なものばかり。それはエーロが13歳の時に、家族でアメリカへ移住したことが大きいでしょう。エーロの父はアメリカの建築に大きな影響を与えた建築家のエリエル・サーリネン。エリエルはミシガン州のクランブルックアカデミーの初代校長を務め、エーロもそこで学びます。このクランブルックで、エーロはチャールズ&レイ・イームズ、そしてノル社のフローレンス・ノルと出会いました。フローレンスはサーリネン家で夏休みを過ごすほど親しく、エーロとは生涯を通じて兄妹のような関係が続いたといいます。彼女からの依頼でエーロは、この「チューリップチェア」ほか、現在もノルを代表する多くの作品をデザインしたのです。

「チューリップチェア」は一本脚で自立する世界初の椅子であり、ミッドセンチュリーを代表する名作です。その背景には「椅子やテーブルの足まわりはごちゃごちゃしていて見苦しく、気持ちが休まらない。脚の数々を一掃したい」という彼の強いこだわりがありました。エーロは同一素材による一体成型を目指してさまざまな試みを重ねましたが、当時の技術では難しく、シェル部分はプラスチック、脚部はアルミダイキャストにプラスチック仕上げを施しデザイン的に融合させています。

シートは回転式と固定式があります。すっきりとしたデザインのアームレスタイプも。サイズはW490×D530×H790×SH470mm

シートクッションのほか、シェル全体をカバリングすることも可能。シリーズにはテーブルとスツールもあります。

一本脚で自立する、世界で最初の椅子。

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