Vol.35 ワシリーチェア
Vol.35

ワシリーチェア

マルセル・ブロイヤー

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

バウハウスの家具工房で教官をしていたマルセル・ブロイヤーが、自転車のハンドルにインスピレーションを得てデザインしたと言われる「ワシリーチェア」。モダンデザインを語る上で外せない名作はスチールパイプを使用した最初の椅子であり、バウハウスのデザインを象徴する存在でもあります。

スチールパイプとレザーを使い、線との面だけで構成されたデザイン。素材もデザインも画期的なチェアはデザイン史における重要な一脚です。サイズはW790×D690×H730×SH420mm

ハンガリー出身のマルセル・ブロイヤーはバウハウスの一期生として学び、初代校長であったヴァルター・グロピウスに見出され世界を股にかけて活躍することとなります。卒業後は家具工房でも教鞭をとった彼は、家具と建築の両分野において大きな功績を残しています。

世界初のスチールパイプ製のチェアとして、デザイン界に衝撃を与えた「ワシリーチェア」は、ブロイヤーがバウハウスの教官であった1925年に誕生しました。自転車のハンドルにヒントを得て、バウハウスのあったデッサウの配管工に協力をあおいで作られたといいます。線と面のみで構成されるデザインは、ブロイヤーがデ・ステイルや構成主義の影響を受けて生まれたもの。椅子といえば木製が主流であった時代に、工業素材のスチールパイプを用いたチェアは、軽く、大量生産が可能で、製作工程において金型などの大規模な設備投資を必要としない点でも優れています。このチェアが発表されると、ウォルター・グロピウス、ル・コルビュジェやミース・ファン・デル・ローエら、巨匠たちも追随。20年代後半には続々とスチールパイプ製のチェアが発表されました。

ワシリーチェアは当初、「クラブチェア B3」という名称でした。ブロイヤーとバウハウスの同僚で親交のあった画家のワシリー・カンディンスキーが愛用したことにちなみ、後にイタリアのガヴィーナ社が製造した時代に「ワシリーチェア」という名前がつけられたのです。68年以降はガヴィーナ社を買収したノルが製造を担うようになり、現在までロングセラーとして世界中で愛されています。

芸術と産業を調和させるというバウハウスの思想を具現化した形。ピンと張ったレザーのシートが徐々に身体に馴染んでゆきます。

スタンダードなブラックレザーのほか、レザー、ナチュラルキャンバスともにカラー展開も豊富。

Vol.35 ワシリーチェア