Vol.13 バルディズ・ボウルチェア
Vol.13
Vol.13 バルディズ・ボウルチェア
バルディズ・ボウルチェア

リナ・ボ・バルディ

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

この数年、ブラジルのミッドセンチュリー期に誕生した家具が世界的に盛り上がりを見せています。その魅力はなんといっても、移民がもたらした西欧やアフリカの文化と土着文化が入り交じる力強さと創造性にあります。なかでもその盛り上がりを牽引するのが女性建築家リナ・ボ・バルディの存在。再評価が高まる彼女の初期作品でありながら、長らく製品化されていなかった椅子がイタリアの家具メーカー「アルペール」から復刻されています。

製品化されていなかったため正確な寸法などの資料が乏しく、リナの自邸に現存するオリジナルプロダクトを解釈しながら復刻されました。サイズはシェル: φ890×深さ420×フレーム650×H310mm

イタリアに生まれ育ち、ジオ・ポンティの事務所で働いた経歴をもつバルディは終戦後の1946年にブラジルへ渡ります。続く51年に彼女は、緑豊かな高台に自邸「ガラスの家」を設計します。ピロティで持ち上げられた全面ガラス張りのモダニズム建築としてよく知られていますが、「バルディズ・ボウルチェア」はこの自邸とともにデザインされました。
スチールフレームに半円形のシートを載せ、シートの角度を自由に変えることができるユニークな椅子。それでいて洗練されたデザインには、彼女がイタリアで学んだ合理性を感じとることができるでしょう。後にバルディはフォークロアなデザインへと傾倒し、木材を用いたシンプルな家具をデザインするようになります。しかしその建築や家具は、常に人と物との関わりを強く意識したものであり続けました。この椅子にはすでにその考えが大きく表れているのです。

ポップな色づかいも含めて復刻された「バルディズ・ボウルチェア」は、同時代にデザインされたイームズなどのミッドセンチュリー家具とも親和性が高く、どこか似通った雰囲気を醸しています。国境をまたいでアメリカのミッドセンチュリー家具とコーディネートを楽しむのも良さそうです。

オリジナルプロダクトは黒いレザー張りとシェルがプラスチックでできたものでした。復刻に際して多数のカラーが用意されました。

デザインされて半世紀以上の時を経ても、古さを感じさせないデザインです。

Vol.13 バルディズ・ボウルチェア