東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第93回 MERCEDES-BENZ GLE 450 4MATIC SPORTS/メルセデス・ベンツ GLE 450 4マティック スポーツ
名執事は家名のためにすべてを捧げる!? 映画『日の名残り』に重なる、新型GLEの真価とは。
Mクラスから数えて4代目となるメルセデス・ベンツの中型SUV、GLEクラスがモデルチェンジした。3列シートが導入され、3L直列6気筒エンジンでエアサス仕様。メルセデスに「こういうクルマをつくらせたら右に出る者なし」って感じですよ。
とにかく静粛にして、なめらか。大型連休を利用して延べ1700km、うち半分は6人の乗員で3世代による家族旅行にも使ってみたんだけど、峠道だろうと高速道路だろうと、「あぁメルセデス」とため息が出るほどのリアルな高級SUVだったんだ。その魅力は「余裕」のひと言に尽きるね。
パワートレインであるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)付きの直列6気筒エンジンは、アイドリングストップから始動までのストップ&ゴーを、さながら物音を立てずに獲物に近づく猟犬のようにやってのける。9段の多段オートマティックは絶妙すぎで、その静かさ故に存在を感じさせないエンジンとともに、高速域でもいかんなくスムーズで力強い走りを演出する。普段は左側の走行車線をゆっくりクルーズするのにうってつけだけど、ひとたび追い越し車線に入ると余裕の動力性能を発揮する。これぞメルセデスでしょう。
Sクラスでは主張が強かった直列6気筒のエンジンフィールも、GLEではあくまでも裏方に徹しているのが印象的だった。もはやそこにはBMWへの対抗意識なんてものは微塵も感じられないし、適材適所のプロダクト本位。これはメルセデスがメルセデスらしい場所へ帰ろうとしている、原点回帰なのかもしれないって思ったね。
新型SUVに込められた、メルセデスらしさの追求。
そんな新型GLEのなんたるかは、エアサスの仕様に表れている。静粛性を担保しつつ、少しスピードを上げるとフワフワしてくる感覚がありながらも、速度に応じてそれをまったく気づかせずに足元を固めていくんだ。
まず「あ、エアサス」とわかる、ゆらりとしたオールドスクールな足まわりを印象づけておいて、やわらかいエアサス独特の頼りなさがないことを後から気づかされる感じ。その初めは気づかせないところがポイントで、固さを感じさせない本当にギリギリの線なのね。隠し味をそれと主張させない料理人、または映画『日の名残り』でアンソニー・ホプキンスが演じた名執事の仕事って感じですよ(笑)。
「ハイ、メルセデス」でお馴染みの音声によるインフォテインメント操作や、長時間運転しているとシートを可動させて快適なエクササイズを提案してくれる機能とか、1年前には考えられなかったような気の利いた機能が重宝したってこともある。でも感心するのは、そういう手の込んだメルセデスらしいこだわりに他ならないんだな。
今回、ホイールベースや全幅が拡大されて大型化し、Sクラス並みの安全快適装備をフル搭載。3列シートで7人乗りにもなったし、明らかに格上感が増している。それでいて見た目の大きさは感じさせず、フロントを中心に押し出しの強いデザインになっている。方向性としては特にMクラス2代目の、ラッパーの50セントよろしくマッシブなヒップホップ番長化していた頃とは隔世の感があるよね(笑)。そしておそらくはV8エンジンもあるだろう、AMGモデルが非常に楽しみな一台。大排気量エンジンをこの適材適所の名執事ならどうするのか、その手腕が気になるところだね。
●エンジン形式:直列6気筒DOHCターボ(ISG搭載)
●排気量:2996cc
●最高出力:367PS
●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
●車両価格:¥11,320,000(税込)
問い合わせ先/メルセデスコール
TEL:0120-190-610
www.mercedes-benz.co.jp