エアレース機の美学を宿した、鮮烈なクロノグラフ

  • 文:並木浩一

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BELL&ROSSベル&ロス

エアレース機の美学を宿した、鮮烈なクロノグラフ

岩崎 寛(STASH)・写真
photographs by Hiroshi Iwasaki
並木浩一・文
text by Koichi Namiki

ベル&ロスがつくる空の時計は、いつも優れている。コックピット・クロックを思わせる角形のモデルを筆頭に、ファンの期待は裏切られることがない。航空計器にインスパイアされた時計は造形の美しさで腕時計好きを魅了し、さらに航空ファンも虜にした。ブランドの母国フランスの空軍の求めに応じた時計を手がけ、コアな空のミリタリーギア愛好家をも魅了する。そんなベル&ロスが、空に対する敬意や憧憬を鮮やかに形にしてみせる新作が「BR V
2ー94 レーシングバード」である。 
ラウンド形のクロノグラフといえば、フランス海軍航空隊のためにベル&ロスがつくったモデルが思い出されるが、新作の魅力はまったく異なる。BR V2ー94 レーシングバードは、名高いネバダ州リノのエアレースを駆けるプロペラの機体とコンセプトを共有するモデルである。しかも、飛行機より先に腕時計が完成した。ベル&ロスのデザインスタジオの戦略は、飛行機にちなんだ時計をつくるのではなく、飛行機そのものと腕時計を自ら設計・デザインすることにあった。飛行機をつくるにはまず設計をする人間と、素材の金属を鍛えることが必要だ。ベル&ロスは前者を先に選んだのである。 
機体「BRバード」は、グラファイトとファイバーグラス、チタンとアルミニウム合金を素材とする。大戦時の英国空軍機「スピットファイア」と同様、V12気筒のロールス・ロイス製レシプロエンジン“マーリン”を架装する。機体の構想が決め込まれていく一方で、腕時計は唯一無二のカタチに出来上がっていった。 
機体と同色の白文字盤を選び、尾翼のブルーは、ベゼルとインデックスに採用した。クロノグラフ針カウンターを象るオレンジの機影は主翼先端の採用色と同一に揃え、陽極酸化アルミニウムのブルーリングをベゼルに奢る。ネバダの空を駆けるレース機にふさわしい軽快なカラーリングを纏い、完璧にクールな腕時計が完成したのである。

BR V2-94 レーシングバード

自動巻き、クロノグラフ、SS、ケース径41㎜、陽極酸化処理アルミニウムリング付きSS製タキメーターベゼル、シースルーバック、カーフ革製ブルーストラップ(SSブレスレットの別仕様あり)、世界限定999本、100m防水。¥583,200(税込)
オールブルー TEL:03-5977-7759