アナログ復活を象徴する、名プレーヤー

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    アナログ復活を象徴する、名プレーヤー

    高級機に劣らない音質を誇りながらも、初心者にも優しい使いやすさを備えた。¥108,000(税込)

    時代はアナログだ。先日、世界最高のオーディオ・ショー「ミュンヘン・ハイエンドショー」に行って驚いた。実演イベントで、ほとんどのブースがレコードプレーヤーを音源にしているではないか。時代はハイレゾを超え、アナログに大Uターンしていることを肌で感じた。アナログレコードはニューメディアなのだ。
    そんななか、不思議となかったのが、「音のいい、使いやすい入門機」だ。市場は数万円クラスの安価プレーヤーか、数十万円以上の高級プレーヤーに大別され、初心者がレコードの高音質を手軽に楽しむための適切なプレーヤーが、これまでなかった。そんな空白地帯を埋めたのがテクニクスのSL‐1500Cだ。
    テクニクスのプレーヤー事業はいま絶好調。パナソニックはオーディオ部門「テクニクス」ブランドをいったん休止し、5年前に再開。以前から得意にしていたレコードプレーヤーを再デビューさせたところ、またたく間にマニアの心をつかみ、リブランディングは大成功。カギとなったのが、技術的な裏づけをもった高音質に仕立てたことだ。
    テクニクスはかつてダイレクトドライブ(モーターが直接ターンテーブルを回す)技術で一世を風靡したが、休止している間にハイエンド市場では、ベルトドライブ(ベルトを介して回す)が主流に。テクニクスは再デビューに当たって、昔のダイレクト技術をそのまま使うのでなく、さらに回転ムラを極限まで減少させるデジタル制御技術を導入し刮目の高音質を得た。その結果、マニアが絶対的に支持するブランドになったのだ。SL‐1500Cは、ハイエンドで培った回転制御技術、特に回転を安定させる「サーボ学習」をそのまま採用した点が光る。
    基本性能の高さに加え、便利さも強みだ。レコードプレーヤーでは、高級機ほど機能が削られ、付属品も少なくなる。カートリッジもない。マニアなら、既にいくつももっているという理屈だ。だから、ハイエンドプレーヤーは、本体だけでは音は出せない。ところが、SL‐1500Cは初めてレコードを使う人にも大変、優しい。初心者に必要なあらゆる機能と付属品を搭載。カートリッジが付いているので、アンプのフォノ入力にそのまま接続すれば、すぐにレコードが聴ける。
    さらにオートリフトアップ機能が大変便利。レコードリスニングは気持ちがいいから、聴きながらつい寝てしまう。起きたら、あら大変、そのまま回りっぱなし、針が心配という失敗は、レコードユーザーなら何回もしている。SL‐1500Cは、アームが内周まで行ったら、自動的にアームを上げてくれるのだ。 いまレコードをいい音で聴きたければ、迷いなく選ぶべき名プレーヤーである。

    アンプにフォノ入力がなくても、MM対応のフォノイコライザー内蔵なので、ライン端子で接続可能。

    麻倉怜士
    デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
    ※Pen本誌より転載