そのロングテールはイングランドの誇り!? スーパークーペの新常識、マクラーレン GTとは。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第100回 McLAREN GT / マクラーレン GT

    そのロングテールはイングランドの誇り!? スーパークーペの新常識、マクラーレン GTとは。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    フロントのハンマーヘッド・ラインと、サイドの大型エアインテークが目を惹く。

    マクラーレン初となるグランドツアラー、マクラーレン GTのステアリングを握った。乗る前にマクラーレン GTに抱いていたイメージは、ハードコアな登山服をつくっているアウトドアメーカーが、タウンユースにも対応するファッショナブルなラインを立ち上げたという感じ。固定のファンだけではなく、より多くの人たちにブランドを知ってもらいたくて門戸を開いたモデルなのかなと。乗ってみるとその見立ては間違ってなかったけど、F1コンストラクターの名にかけて、サーキット走行にも対応する理想的な市販車をつくるという気概にあふれていて感激しちゃったよね。いやはや、ホント一歩も譲らない。さすが「今後もSUVはつくらない」と断言するだけあって、頑固なイングランド人気質を感じずにはいられない。
    思えばマクラーレンは、市販車部門を設立して今年で10年目に当たる。昨年は販売台数4800台にまで拡大し、その車両はすべてイングランドのサリー州にあるマクラーレン・テクノロジー・センターで、手作業で組み立てられている。すでにセンターはフル稼働状態で大幅な増産は望めないので、マクラーレン GTは単純に販売台数を伸ばすための戦略車とは言いがたいんだな。ただ、ブランドを知ってもらうための重要な戦略車なのは間違いない。たとえばマクラーレンには興味があるけど、ゴルフやスキーといったアウトドアスポーツが好きで、出かける時はクルマがセット。だからこそ、手を出せずにいたドライバーには待望のモデルと言えるよね。
    とはいえ、同じ英国のアストンマーティン DB11 V8のような、アーバンで軽快な2シーターV8クーペを想像していると思い切り裏切られる。ステアリングは接地抵抗を感じるための十分な重さがあり、ブレーキは踏力の加減がそのままブレーキングの力になって現れる。その時点で「ハードルが高いな」と思わされるけど(笑)、街乗りでも余裕でわかるマクラーレンの代名詞であるカーボンモノコックの剛性感と、クラス最軽量の1.53tしかない軽量ボディを味わえば、「すぐに慣れる」と納得するはず(笑)。
    箱根で走り込んでみたけど、しっかりと使い勝手をもたせながら、マクラーレンらしさを失っていないハイレベルなエンジニアリングに気づかされ、ため息しか出ないよね。戦闘力が高く、美しく気高い。人気ドラマシリーズ、『ゲーム・オブ・スローンズ』の“ドラゴンの末裔”デナーリス・ターガリエンって感じ。マクラーレンのオーナーズミーティングみたいな場所でも、「肩身の狭い思いはしないから安心して」って感じ(笑)。

    サーキット走行も可能な、最新型グランドツアラー

    マクラーレン GTはポートフォリオで言うと、720Sのスーパーシリーズや570Sのスポーツシリーズに比べてよりオンロードに寄せた、グランドツアラーという新設されたカテゴリーに属するのね。この公道走行仕様のマクラーレンは3.9ℓのV8ツインターボを慎ましく、かつアクセルを踏み込んだ時にはターボの回転音を印象的に演出している。ドライブモードをコンフォートにしていると低音のハミングが心地よく、抑制の効いたいかにも英国的なグランツーリスモでもある。
    足まわりは720Sにも採用されていたプロアクティブ・ダンピング・コントロールで、可変型の油圧式ダンパーが路面からの入力を受け止める。ロードノイズを伝えずに路面状況だけを教えてくれるから、クルーズしているとちょうど排気音のベースラインにバスドラムが入るような音響的な一体感がある。寡黙な武骨さの中に抑制された色気があって、それがエレガントなんだ。アイドリングストップの一瞬の静寂でも、息を止めるようなひそやかさが漂うわけ。トラックモードにおける高速域やワインディングを攻めている時でさえ、そのエレガントさは失われずにスーパーカーの本領である、まだ見ぬ領域へと入っていける。
    そんなマクラーレン GTは、ミッドシップレイアウトのスーパークーペでもある。そもそも長距離移動を快適にしてくれるグランドツアラーの魅力は、大型クーペのチャームポイントに重なるよね。マクラーレン GTのルーフからエンドまで伸びた美しいクーペラインは、エクステリア最大のポイントで、マクラーレンの遺産でありハイエンドスポーツモデルに冠される重要なキーワード、ロングテールを彷彿とさせる。ロングノーズならぬロングテールのクーペボディというところに、マクラーレン GTに込めた「マクラーレンとはなにか?」という、従来のグランツーリスモへの強烈なアンチテーゼを感じたりもする(笑)。
    マクラーレンは人間工学的に追求された乗りやすさに定評があって、そもそもがグランドツアラー的な性格が強いスーパーカーブランドではあるけど、マクラーレン GTは一日乗り続けてもホント疲れない。毎日の通勤に乗りたいスーパーカーだし、仕事で疲れた時には必ず優しい顔を見せてくれるはず。そして低音のハミングを聴きながら、そのまま遠くへ出かけたくなるマクラーレンって感じなんだな。

    • 走りを予感させるフロントマスク。0-100km/hの加速はわずか3.2秒。

    • 内装はビスポークによる多彩な組み合わせが可能。

    • スピードテールを彷彿とさせる長いテールが特徴。

    • 遮光濃度を変えられるパノラマルーフ。

    • カーボン製シャシー「モノセルⅡ-T」によりエンジン位置を下げ、リアの荷室容量を420ℓ確保した。

    • 外装にはあえてカーボン製パーツを使用していない。

    マクラーレン GT
    ●サイズ(全長×全幅×全高):4683×2045×1213mm
    ●エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
    ●排気量:3994㏄
    ●最高出力:620PS/7500rpm
    ●駆動方式:MR(ミッドシップエンジン後輪駆動)
    ●車両価格:¥26,450,000(税込)

    問い合わせ先/マクラーレン・オートモーティブ
    https://cars.mclaren.com
    マクラーレン東京 TEL:03-6438-1963
    マクラーレン麻布 TEL:03-3446-0555
    マクラーレン名古屋 TEL:052-528-5855
    マクラーレン大阪 TEL:06-6121-8821
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