加糖ジュース、「飲めば飲むほど死亡リスク高まる」米研究で

  • 文:松丸さとみ

Share:

加糖ジュース、「飲めば飲むほど死亡リスク高まる」米研究で

12万人弱のデータを追跡して...... monticelllo-iStock

<アメリカで12万人弱を対象に行われた大規模な調査で、加糖清涼飲料を飲みすぎると、心臓病やがんで死亡するリスクが高まることがわかった>

12万人弱のデータを追跡

炭酸飲料やスポーツドリンクなど甘いジュースを飲みすぎると、心臓病やがんで死亡するリスクが高まることが、12万人弱を対象に行われた大規模な調査で明らかになった。米国心臓協会が発行する学術誌「サーキュレーション」に発表された。

米ニュース専門チャンネルCNBCは、「加糖清涼飲料を飲めば飲むほど心臓病で死亡するリスクが高まる」と伝えている。

調査は、ライフスタイルや食事について数十年にわたりアンケート用紙を送り、継続的に回答してもらう形で集めたデータを使用。男性3万7716人(収集期間1986〜2014年)と女性8万647人(収集期間1980〜2014年)の合計11万8363人分のデータを米ハーバード大学の研究者チームが分析した。

なお、もともと心臓病やがんなどがあった人はあらかじめ対象外となっている。また、ここでの「1杯」とは、通常サイズのコップ、ボトル、缶のいずれかを指すという。

調査は、清涼飲料水のうち、炭酸飲料やジュースなど自然の砂糖を加えたものと人工甘味料を使用したものをそれぞれ調べた。報告書によると、自然の砂糖を加えた清涼飲料を1日に2杯以上飲んでいた人は、あまり飲んでいなかった人と比べ、心臓疾患で死亡するリスクが31%高かった。自然の砂糖の清涼飲料の摂取が1杯増えるごとに、心臓病に関連する要因で死亡するリスクが10%高まったという。

また、心臓病ほどではないにせよ、砂糖を加えた清涼飲料は乳がんと大腸がんを誘引するリスクを高めることも示唆された。

一方で、人工甘味料を使用した清涼飲料の場合は、飲む量が多い人(1日4杯以上)に限り心臓疾患で死亡するリスクがあったという。がんで死亡するリスクは見られなかった。

報告書は「水」を奨励、業界団体は反発

報告書によると、自然の砂糖を使った清涼飲料を1日1杯、人工甘味料のものに切り替えれば、死亡のリスクが全体で4%、心臓疾患関連の死亡リスクは5%、それぞれ低下する。そのため報告書は、砂糖を加えた清涼飲料の摂取を控え、人工甘味料のものに切り替えることを勧めている。

CNBCによると、報告書の筆頭執筆者である米ハーバード大学のヴァサンティ・マリク博士が考える「加糖飲料の適量」は「ゼロ」だ。しかし週に1杯か2杯程度なら健康への影響はあまりないだろうとしている。とはいえ、やはりおすすめのドリンクは「水」だという。

米大手清涼飲料メーカーの多くが加盟している、業界を代表する団体である米国清涼飲料協会は、今回の調査結果には反対との姿勢を示している。米ニュースサイト、クオーツによると同協会は声明の中で、「ソフトドリンクは、我々の業界が作るどの清涼飲料とも同じように、バランスのいい食生活の一部とするのに安全な飲み物だ。我々の業界の飲み物で使用されている砂糖は、他の食品に使用されている砂糖と同じものである」と述べている。

なお、米国では複数の都市で、炭酸飲料などの加糖清涼飲料に課税する「ソーダ税」を導入している。糖尿病や心臓疾患、虫歯など砂糖に関連した疾患を減らすのが狙いだ。(ロイター通信)によると2015年に全米でいち早く同税を導入した米カリフォルニア州バークレーでは、税導入前と比べ、バークレー住人のソフトドリンクの消費量は半減しており、変わって水の消費量が29%増えたという。

文:松丸さとみ