デイヴィッド・ホックニーが自画像でも着ていたラグビージャージ

デイヴィッド・ホックニーが自画像でも着ていたラグビージャージ

文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一
イラスト:Naoki Shoji

第3回 ラグビージャージ/バーバリアン

デイヴィッド・ホックニー──。ポップアートの旗手として1960年代から活躍し、現在でもiPadを使いこなして作品を発表し続ける、まさに美術界の“生きるレジェンド”だ。作品と同じく、本人もお洒落なアーティストとして知られる。彼の着こなしや作品とのかかわり、愛用する“名品”との関係を解き明かす。

1981年の創業当時からつくり続けられている、定番の12オンスのヘビーウエイトコットン素材を採用。着るほどに身体に馴染み、経年変化が楽しめるのもこのアイテムのよさ。クラシックな比翼仕立てのイングランドタイプの襟で、これはいかにもラグビーのユニフォームらしいネイビー×ゴールドの配色。¥13,200(税込)/バーバリアン

デイヴィッド・ホックニー本人が意識しているかどうかは定かではないが、彼の愛用するアイテムにはストライプ柄のものが多い。彼自身が書いた『DAVID HOCKNEY by DAVID HOCKNEY』では、鮮やかなブルーの極太ボーダーのシャツに同じ色と柄のネクタイ姿で表紙を飾る。また『僕の視点─芸術そして人生』(美術出版社)の表紙では、赤のストライプシャツにボーダーのニットタイで登場。さらに、彼の横にはその着こなしの断片を描いた作品が壁に飾られている。

彼が愛用したストライプアイテムの中で、カジュアルさがいちばん漂うのがラグビージャージではないだろうか。1977年の作品『モデルと未完成の自画像』では、横たわったモデルの奥にグリーン系のボーダー柄ラグビージャージを着た自分自身を描いている。

2008年初夏のポール・スミスや2019年のバーバリー、ザンダー ロウ、マルニといったさまざまなブランドがホックニーをフィーチャーしたコレクションを発表しているが、多くはラグビージャージ、もしくはそれに似たボーダーアイテムを象徴的に使っている。『SSENSE』というウェブサイトは、2019年春夏のトレンドレポートとしてホックニーのラグビーストライプを取り上げ、「彼のラガーコレクションは、ただ見て羨ましくなるだけでなく、愛情を込めて着古した感じが出ていて最高によい」と書いている。イギリス出身ということもあるだろうが、自国で生まれたスポーツをやはり愛しているだけでなく、ラグビージャージのストライプ柄にアーティストの視線から魅せられていたのではないだろうか。

バーバリアンは、カナダのブリティッシュコロンビア州でビル・ハートルによって1981年に誕生したブランド。2台のニットマシンと6人のスタッフで創業し、いまや北米最大のシェアを誇るブランドへと成長したのは創業者ビル・ハートルの情熱から。既存のラグビージャージーに疑問をもち、当時カナダに輸入されているすべてのラグビージャージを一点一点分解し、素材から付属品、縫製まで細部にわたって研究し、オリジナルモデルの製造を開始したと聞く。丈夫さはもちろんのこと、洗い込むほどに体に馴染み、素材は心地よい風合いになる。

本物を知るラガーメンからの信頼を得ているだけでなく、タウンウエアとして愛用しているファンも昔から多い。ホックニーの作品同様、永遠の輝きを備えた名品と言えるだろう。

素材には目の詰まった12オンスのコットンが使われている。白襟がラグビージャージの特徴だが、襟の素材はコットンとポリエステルのハリのあるツイル地が選ばれている。

前立てはボタンの見えない比翼仕立て。ボタンもラバー製で、これは選手同士が接触した時に相手を傷つけないようにとの配慮から選ばれたものだ。

ゲームの途中、力が加わることもあるので脇下が補強されている。現在着られているラグビージャージとはデザインも素材も異なるが、そのクラシックで本格的な仕様が、街着として着用する時に確かな品格を与えてくれる。

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デイヴィッド・ホックニーが自画像でも着ていたラグビージャージ