写真:宇田川 淳(物)、高橋一史(人物)
Vol.62 なるほど! と膝を打つ、ゆったりシャツの着こなし術を男たちが指南します。
ルーズシルエットの人気が続く中で、シャツもビッグサイズが増えてきました。ただこのシャツは着こなしが意外と難しいものです。大人が普通にカッチリと着ると、往年のバブル時代にタイムスリップしてしまうことも。そこで今回の「着る/知る」は、ゆったりシャツの着方にフォーカス。ファッション界で働く3人の男性が、ちょっとした装いのヒントを披露します。
その前に本連載からも一つの方法をご紹介(上写真)。シャツの前裾だけのタックインです。パンツの股上が深くなるにつれ、トップを中に入れてメリハリをつける着方が人気になりました。ですがすべて中にしまい込むとビジネスウエアとの区別がつきにくくなります。そこで、前裾だけ入れてベルトを見せましょう。手軽にルーズさと緊張感とのコントラストを狙えます。品のいい服や小物を選べば、ウエスト回りをダボつかせても案外サマになるものです。
女性たちにはお馴染みのスタイリングです。高い位置でウエストマークして脚長に、ウエストも細く見せられる効果があります。男性が実践するなら前裾を軽くパンツに引っ掛けられる短い着丈のシャツを選ぶのが安心です。この着方はポロシャツ、Tシャツ、ニットなどにも応用できます。
シャツはダボッと、Tシャツはインで。
西野大士
大きめのシャツを羽織り、現代的に着崩したアメカジスタイルを見せた西野さん。“イマっぽさ” のポイントは、インナーのTシャツのタックイン。ルーズさを引き締め、ハイウエストのパンツを目立たせたコーデです。
「長らくニットやカットソーの時代が続いてましたが、最近は再びシャツの気分ですよね。大きい服が普通になりましたので、昔のブルックス ブラザーズのボタンダウンを引っ張り出して着てみました。ジャケットの代わりに羽織るのは、夏の季節の体型カバーにもなりお薦めできる着方です。合わせたニートのパンツは腰回りは太く、ただし裾幅は細く。全部が太いとストリートになりがちですから、そこは大人を意識。ベルトと靴も黒の革で揃えて引き締めました」
ビンテージやワークウエアが好きな人に、大いに参考になるカジュアルスタイルです。
カフスを見せる袖まくりのテクニック
高畑 誠
夏らしい派手目なゆったりシャツを羽織った高畑さん。リラックスした服装なのにシックに思えるのは全身を白黒で揃えたことに加え、袖まくりのさりげない工夫にもあります。
「カフスの先端を表に出すまくり方をしています。最初に肘のあたりまで袖を長くまくり、その状態で手首に近い箇所から折り曲げていき、カフスに掛かったところでストップ。シャツの袖を単にまくるだけだと上品に見えにくいです。カフスを出すことによって品よくこなれた印象になります。腕の細さが気になる人でも男らしい腕周りを演出できます。リネンのようにシャリ感のある生地のシャツがよく似合う着方です。グッと華やかに見栄えがよくなりますよ」
いますぐ取り入れられる、知れば納得の洗練された袖まくり術です。
半袖シャツをジャケットとして重ねて。
荻野浩治
シャツ2枚のレイヤードという上級者の着こなしを披露してくれた荻野さん。上にゆったりシャツ、下にはタイトめを着たのが、美しいバランスを生んだコツのようです。
「外側のシャツがオープンカラー(開襟)で、ジャケットに近い襟なのでシャツ同士の重ね着がしやすいです。この着方をするメリットは、仕事中に上を脱ぎ外出時に着るといった変化をつけられること。外側のシャツの襟汚れも防げるため、洗いにくいウールの半袖シャツでも気兼ねなく着られます。実は僕がこの着方をするようになったのは、仕事柄たくさん持ってるシャツを活用したかったから。一昔前に流行したタイトなシャツも、現在のゆったりシャツと組ませれば十分に使えるんです」
洒落ているうえに無駄もなくせる、一石二鳥のコーディネートにぜひご注目を。
「着る」をテーマにした今回のファッション連載「着る/知る」はいかがでしたか? 洒落者の男性たちが教えてくれたゆったりシャツの着こなしに共通するポイントは、「全身の中で一箇所を、ピリッと引き締める」こと。参考にして装いをアップデートさせ、心楽しく暑い夏を乗り切りましょう!