“着るバッグ” が便利すぎて。流行が続いてほしいと願うこの夏。

    Share:

    構成、文:高橋一史
    写真:宇田川 淳

    Vol.59 “着るバッグ” が便利すぎて。流行が続いてほしいと願うこの夏。

    Snow Peak

    世界のモードブランドがこぞって「ストリートスタイル」を打ち出す時代になりました。その背景には第一線で活躍するファッションデザイナーが、サブカルチャーに勢いがあった1990年代に影響を受けた「ストリート世代」ということがあります。ともに育ったスポーツ、アウトドア、ワーク、ミリタリーこそが “クール” であり、それがいまの街中の流行に結びついているのです。

    この風潮の中でタウンアイテムに昇格したのが、収納力が高い「ユーティリティベスト」。今年の春夏シーズンもポケットが多い “着るバッグ” が、多くのブランドから登場しています。アクティブな日常とリンクするベストは、散歩や旅行にも実に便利です。流行を越えて定着することを願ってやみません。

    ここではタイプの異なる3着を紹介します。まず最初は上写真のオールホワイトモデル。ボタンまで同じ色で揃えられたクリーンな味わいです。白Tシャツの上に重ねる同系色レイヤードもよく似合います。キャンプ用品を展開する「スノーピーク」によるこのベストは、アウトドアウエアでありつつもタウン映えするライトな仕上がりです。

    シンプルながらポケットの数が多いのも特徴。フロントの大ポケットに加え、両サイドと裾の内側にもあります。服の生地は20世紀半ばの軍服や登山服で用いられた、防水性のある「ベンタイルコットン」。頑丈な高密度の織りで、活動的な夏にぴったりです。

    alk phenix

    続いて紹介するのは、形状も生地もハイテク感満載の一着。バックパックがベストに変身したような服で、背中にはフラップで覆われた大きな袋状の収納部があります。両サイドから突き出した円柱状のポケットの中も細かく仕切られているなど、機能がてんこ盛りです。生地はソフトな軽量・耐久・撥水のストレッチ素材で、着用感も快適。ブランド名の「アルク」=「歩く」の意味のごとくに、都市からフィールドまでを網羅するベストです。

    ベスト ¥36,720(税込)/アルクフェニックス(フェニックス クリエイティブ セレクト ストア TEL:03-6833-3430)

    Y.O.N.

    今回のラストに紹介するのは、イマどきなファッション性に満ちたベスト。軍モノ(スクロール下に実物を掲載)をメッシュ素材に変更してストリート感を出したデザインです。ひとクセある作風の日本ブランドが手がけました。ポケットはフロントの大きな一個のみで、内側に絵柄をプリントした革が縫い付けられ、グラフィカルな透け感をアクセントにしています。通気性が抜群ですから、夏の短パン+Tシャツ姿にプラスアルファする発想で着てみては?

    ベスト各色 ¥38,880(税込)/ワイ.オー.エヌ.(スタジオ ファブワーク TEL:03-6438-9575)

    ここで参考としてリアルな軍モノをお見せしましょう。古着市場で人気が高まっている、90年代イギリス軍のものです。現代の多くのベストがこれに着想されていることがお分かりでしょう。共布の表地と裏地による2重仕立てで、内部の全面がポケット構造になっています。実はこれは「ボディアーマー」と呼ばれる、銃弾を防ぐ役割の服。内外のポケットに防弾プレートを差し込み着用する、命を守るグッズなのです。なお、状態のいい古着の流通価格は、¥8,000前後です。

    ボディアーマー エディター私物

    COMME des GARÇONS JUNYA WATANABE MAN 2019SS

    イギリス軍のベストをモードに高めた代表的なブランドが、「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」。ユーティリティを得意とする同ブランドは今季、ポケットを軸にした服を数多く展開しています。


    土の薫りを都会に持ち込んだ70年代の「ヘビーデューティ」とは目線が異なる、2019年のちょっとハードなニュースタイルを楽しみましょう!

    ベストの裾の内側には、2つのオープンポケットが。
    記事冒頭のベスト ¥25,920(税込)/スノーピーク(スノーピーク ユーザーサービス TEL:0120-010-660)