写真:宇田川 淳
Vol.39 90年代ミニマリズムの再来か! “ロック”ではない「トムウッド」のデニムラインに大人心がザワつきます。
「ミニマリズム」という言葉を聞き、そのファッションスタイルが頭に思い浮かぶのは、アラフォーからアラフィフの人でしょうか。1990年代にモードデザインの方向性を決定づけたのがミニマリズムです。その名の通りディテールに無駄がなく、シルエットもすっきりとスマート。色彩は黒白モノトーンを中心としたソリッドカラー。知的で洗練されたスタイルでした。この時代に生まれた新発想のデニムは、従来の作業着のイメージを払拭し、都市生活者の新しいワードローブになりました。当時最も影響力があったのは、「ラング ジーンズ(ヘルムート ラング)」、「ckカルバン クライン」、「A.P.C.」といったブランドでした。
ここに紹介するのは、ジュエリーブランドとして世界中で人気を博している「トムウッド」が、2017年にスタートさせたデニムラインです。ほつれや修繕といった加工が、デニムにグラフィカルなリズムを与えています。あたかも、90年代のミニマリズム精神でつくられた現代のデニム、といった都会的なムードが感じられるのです。掲載の2着(上写真)は、ブラックという色も新鮮に映ります。上下をセットで着る難易度の高い着方をしてもサマになるでしょう。
ここにはロックスタイルのようなハードさも、ワークウェアの野暮ったさもありません。「トムウッド」は先端感覚の、ダボッと肩が落ちるトップスやワイドなパンツも展開しています。デザインの拠点はノルウェーで、生産はイタリア。ニュートラルな北欧のテイストと、服づくり大国のクオリティとが融合したのが、彼らのデニムラインなのです。ファッション経験値の高い大人こそがよく似合う、このコレクションにぜひご注目を!
ファッションアイテムとしてのデニムのあり方。
ユニセックス的なアイテムが多い「トムウッド」。肩線をずるっと落として着るこのビッグなロングシャツは、フロントが左前になった男性仕立てながら、基本的に女性用としてデザインされた服です。男性はストレートに着て肩と身幅のゆとりを楽しみ、女性なら襟をうしろに抜いて(落として)着ると洒落た印象が高まるでしょう。ボタンは前ページのシャツと同様の、スナップ式のウエスタンタイプ。袖は肘部分が修繕加工され、こなれたムードに落とし込まれています。
ロングシャツ ¥63,720(税込・参考価格)/トムウッド(ステディ スタディ TEL:03-5469-7110)
今季のブルーデニムのラインアップの中で、よりデザイン性が強い一本を紹介。オーセンティックなデニムと、現代的なゆったりしたテーパードフォルムが見事に調和しています。スラックス感覚で穿き、トップスをパンツインしてベルトでウエストマークすれば、イマドキな着こなしになるでしょう。「トムウッド」はカットソーも手がけており、デニムの左のTシャツもそのひとつ。発色がきれいな滑らかで厚手の生地が使われた、これもまた優れた服です。
Tシャツ ¥14,040(税込・参考価格)、パンツ ¥43,200(税込)/ともにトムウッド(ステディ スタディ TEL:03-5469-7110)
上の写真2点は、「トムウッド」のスタイリッシュなイメージビジュアル。これらの写真も、必要最小限の要素で構成されたシンプルな世界です。この数年で、クセのある服を重ね着し、音楽カルチャーと若さを前面に押し出す、ストリートに急接近するブランドが増えてきました。この流れに迎合せず、着る人を美しく見せることに力を注ぐ「トムウッド」の方向性に、賛同する人は少なくないでしょう。
最後に掲載するのは、「トムウッド」のアイコニックなシルバーリング。これもまた、ミニマルなデザインです。このリングはシルバーのみのタイプですが、トップに天然石を配したタイプも数多く展開されており、各国のセレブリティをはじめ多くの人を虜にしています。
2013年にスタートした「トムウッド」の中で、デニムラインは日本での展開店がまだ限られています。彼らの海外オンラインサイトで購入することもできますので、興味を惹かれた方は、アクセスしてみてはいかがでしょうか?