砂糖、食べすぎてませんか? 食生活を見直したくなる“やってみた系”ドキュメンタリー『あまくない砂糖の話』

    Share:

    左が実験前のデイモン、右が実験終了直後。ぱっと見ただけでもその差は歴然ですが、作品の中で明らかになる数値、そして数値では測れない精神的な影響に驚きます。

    食べ物が人体にどう影響するかを、身をもって実験するドキュメンタリーというと、『スーパーサイズ・ミー』(2004年)を思い出す方も多いでしょう。あの映画は30日間、マクドナルドのメニューだけを食べるものでしたが、この『あまくない砂糖の話』は「砂糖」が実験テーマ。オーストラリア人が一日に摂取する糖類(sugar)の平均量を60日間、摂り続けるのです。その糖類(単糖類+二糖類。でんぷんなどの多糖類は除く)の平均量とはティースプーン40杯=約160g。そんなに!と思ってしまいますが、スーパーに並ぶ加工食品や調味料の約8割に、糖類は使われているのだそうです。この実験に、恋人の影響で精製した砂糖は一切摂っていなかったデイモン・ガモーというオーストラリア人が挑みます。きっかけは数ヵ月後に控える娘の誕生。どれが正しいかわからない糖類にまつわる説を、子どものために検証しようとしたのです。実験がスタートし、恋人のお腹がどんどん大きくなるのと合わせるように、デイモンのお腹も膨らんでいきます。

    実験型ドキュメンタリーといっても決して単調ではありません。デイモンが食べ、実験のために結成された専門家によるチームが分析するだけでなく、砂糖の歴史や種類をわかりやすく紹介したり、さまざまなインタビューやイメージ映像を挟み込んだり、ポップな視覚効果で楽しませたり。実験の最中、デイモンは“砂糖の王国”であるアメリカに乗り込むのですが、かの地でのエピソードは驚愕の連続でした。

    運動をやめてカロリーを考慮しなかった『スーパーサイズ・ミー』とは、実験方法がかなり異なります。デイモンがいつもしていた軽い運動は続け、明らかに多量の砂糖が入っている炭酸飲料や菓子はなし。シリアルやジュース、調理済み食品といったものから、設定したティースプーン40杯を摂っていきます。しかもできる限り、「ヘルシー」「低脂肪」「オーガニック」を謳うものを選びながら。摂取カロリーは実験前とほとんど変わらなかったのに、デイモンの身体はみるみる変化していくのです。

    観終わって感じるのは食育の大切さです。正しい知識や情報を蓄積して、日々食べるものを選んでいかなければならないのだと痛感しました。健康に気を遣っている方にはもちろんのこと、ふだん食事のことを深く考えていない私のような方にもお薦めしたい映画です。というわけで、ランチ後に毎日のように食べていたアイスは、週に一度の密かな楽しみにしたいと思います。(Pen編集部)

    俳優を登場させたり、ポップな視覚効果を使ったり、楽しい仕掛けをいくつも施して飽きさせません。

    加工食品には想像以上にたくさんの糖類が使われていて、意識してチェックしないとあっという間に過剰摂取になってしまいます。

    © 2014 Madman Production Company Pty Ltd, Old Mates Productions Pty Ltd, Screen Australia ALL RIGHTS RESERVED

    『あまくない砂糖の話』

    原題/That Sugar Film
    監督・脚本・出演/デイモン・ガモー
    出演/デビッド・ギレスピー、ケン・サイカリスほか
    2015年 オーストラリア映画 1時間42分
    配給/アンプラグド
    3月19日よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開。
    http://amakunai-sugar.com