国家機密を暴露しアメリカ全土を揺るがせた、ひとりの青年のパーソナリティを描いた映画『スノーデン』をご覧あれ!

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    2013年、アメリカ政府があらゆる大手インターネット起業のサーバーに直接アクセスし、国民すべての通信記録を収集・分析しているという事実を暴露する大事件がありました。告発したのは、NSA(国家安全保障局)のサイバー・エキスパートだった30歳にも満たない若者、エドワード・スノーデン。収集されたおよそ1700万件のトップシークレットを持ち出し、国家権力濫用の実態を自らの名前と共に明らかにしたこの事件は、アメリカのみならず全世界に衝撃を与えました。

    国家を敵にまわしたスノーデンは当然、犯罪者として指名手配の身となり、現在は2020年まで滞在できる許可証が発給されたロシアで居所を隠しているといわれています。NSAは違法性がまったくないことを主張し、FBIが捜査を進めることを表明してますが、世論の意見は違います。スノーデンの行動を称える人が多く表れ、また2014年1月にはノルウェーの環境大臣がノーベル平和賞候補に選んでいます。ただ、スノーデンが持ち出した情報の中身は明らかになっていません。それがNSAが犯したと思われることの証明になるのか。彼は英雄か、それともやはり犯罪者なのか。この議論はこれから先もおそらく続いていくでしょう。

    2014年、国家の情報収集方法などをスノーデン本人が説明するドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』が、スティーヴン・ソダーバーグ総指揮の元で製作されました。一方で現在上映中の『スノーデン』は、主人公の人物像に焦点を当てた作品になっています。監督を務めたのはオリバー・ストーン。ベトナム戦争が題材の『プラトーン』をはじめ、これまでも監督は社会に大きな影響を与えた一大事件にフォーカスし、その光景や残酷さを色濃く残しながら、登場人物の心象をドラマティックに描いてきました。

    ハーフリムの眼鏡がよく似合う、ナイーブな雰囲気のジョゼフ・ゴードン=レヴィットが演じるスノーデンの本当の姿は、ハッカーや英雄ではなく、『攻殻機動隊』がお気に入りの親日家であり、インターネット上で知り合った恋人リンゼイを愛するひとりの青年でもあります。先の告発はある意味で、その人間らしさを失ってしまう危険性も孕んでいました。何故、スノーデンはすべてを捨ててまで、行動に移したのか。『スノーデン』は、報道での彼とは違う側面を知ることができる素晴らしい機会となるはずです。(大隅祐輔)

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    本人にそっくりなジョセフ・ゴードン=レビットの演技力にも注目です。

    キャリアも生活も失ってまで、彼は何を守りたかったのか・・・。結末まで目が離せません。

    『スノーデン』

    原題/SNOWDEN
    監督/オリバー・ストーン
    出演/ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー、メリッサ・レオ、ザカリー・クイント、トム・ウィルキンソン、リス・エヴァンス、ニコラス・ケイジほか
    2016年 アメリカ・ドイツ・フランス映画
    配給/ショウゲート
    全国劇場にて公開中。

    http://www.snowden-movie.jp/