写真家・岡原功祐が主宰する若手写真家の支援金プログラム、「Pitch ...

写真家・岡原功祐が主宰する若手写真家の支援金プログラム、「Pitch Grant」にご注目を。

文:中島良平

10名のファイナリストがスライドで作品を見せながら、50名ほどの公開審査員に向けて作品の意図などのプレゼンテーションを行った。 photo:©佐野一人

2001年に紛争後のコソボを訪れたことをきっかけに、フリーランスの写真家として活動を開始した岡原功祐。W.ユージン・スミス賞フェローシップやゲッティー・グラント、ピエール&アレクサンドラ・ブーラ賞など海外の写真賞を数々受賞するなど、人の居場所をテーマに各地で撮影を続けてきた彼が、35歳以下の写真家と写真を用いて制作を行う作家を対象に、Pitch Grantと題する支援プロジェクトをスタートした。

岡原は以前暮らしていたパリで、写真のプロジェクトを聴衆の前でプレゼンし、一番票を集めた人のプロジェクトが数十万円の支援を受けられるイベントに参加した。予備審査を通り、ファイナリストとして登壇したものの、時間が足りずに失敗してしまった経験から、若手写真家が的確にプレゼンし、その見返りとして支援を受けられる支援金プログラムを企画することになったという。個人からの寄付に頼り、すべて無償で行う個人的な社会貢献活動のため、助成金は10万円と高額ではないが、優れた作品制作と同様にプレゼンの重要性を多くの人が理解し、国内外で発表する場が広がる未来を岡原は思い描く。

京都市の将軍塚青龍殿を会場に、9月21日に公開審査が行われ、10名のファイナリストがプレゼンを実施。2名の受賞者が決定した。卵を被写体とする作品『Unbreakable Egg』を出品した横山佳奈恵と、公害病で知られる土地の現在を伝えようと熊本県の水俣を撮影した『あめつちのことづて』の豊田有希。10名のファイナリストは自らの活動を言葉で表現することの重要性を実感し、発表と支援の好循環が生まれるひとつの契機となったはずだ。受賞作家2名の活動はもちろんのこと、2021年以降も継続するプロジェクトとしてPitch Grantの今後を追いかけたい。

横山佳奈恵『Unbrealable Eggs』 3年前から養鶏場でアルバイトをする横山は、ヒビが入っていたり、殻の表面が変わった卵などを「破卵」としてよける検品作業を通して、卵がいろいろな表情を持って産まれてきたことを知り、衝撃を受けた。やがて愛着を抱き、家にもち帰って撮影するようになって作品が生まれた。(注:「破卵」も廃棄されることはなく、加熱用卵などとして販売されるが、スーパーマーケットなどの小売店で目にすることはない) photo:©横山佳奈恵

豊田有希『あめつちのことづて』 2011年10月、熊本県の山間部の集落で集団検診が行われ、住民78人のうち39人が受診し、37人に水俣病の症状が確認された。そのことを新聞記事で知った豊田は、水俣病とは一体何なのかを知るために山間集落へと足を運んだ。差別を恐れて声をあげづらい風潮や、正しく理解されていない病気の実情などを知り、悲劇の象徴としてではなく、土地のあるがままの営みを撮り続けようと決めたという。 photo:©豊田有希

Pitch Grant
https://thebackyard.jp/pitch


●ほか8名のファイナリストとそれぞれの作品名は下記(敬称略)

波多野 祐貴 / Search for His Home
大村祐大  / A flower on the rock
トミモとあきな  / マモノ
杉山 有希子  / CRASH
山西 もも  / Cast in
菅泉 亜沙子  / 風が吹き、土に着く
折田 千秋  / Image picture
片岡 俊  / 穴を掘る

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