悩むと幸せになれる4つの理由

  • 文:河田真誠

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生き方や働き方などの悩みや問題を、質問を通して解決に導く質問家(質問の専門家)として活動する著者が、そのメソッドについて書いた『悩み方教室 心のモヤモヤが晴れる8つの質問』 (河田 真誠 著/CCCメディアハウス)。

本書の第一章「悩みと親友になる」から、「悩むと幸せになれる理由」について抜粋してお届けする。


1. 悩むと、自分で自分を幸せにできる 

なぜ、悩むと幸せになれるのか? 僕が思う1つめの答えは、「自分で自分を幸せにできるから」だ。僕も「宝くじが当たらないかな」とか、「ステキな人に告白されないかな」と、いつか誰かが幸せにしてくれることをずっと願ってきた。でも、なかなかそんなことは起こらない。1億円以上の宝くじが当たる確率は、雷に打たれて死ぬ確率よりも低いらしい。そんな一発逆転に人生を懸かけるのも怖い。白馬に乗った王子様が来る前に人生が終わってしまうことにもなりかねないし、来たとしてもそんな生き方をしている人が、選ばれるとも思えない。そもそもあなたを幸せにできるのは、あなただけなのだから、自分を幸せにすることだけからは逃げてはダメだ。 

あなたに必要なのは、いつか誰かが……と幸せを他人頼みにすることではなく、うまくいってないこと、チャレンジしたいこと、納得できていないことなど自分の悩みを見つけて、オセロを1枚ずつひっくり返していくように、1つずつ自分の手で自分なりの決着をつけていくことだ。悩みは、また1つ、人生を自分の色に変えていくチャンスだ。悩むほどに、人生はあなた色になっていく。  

2. 悩むと、自分の本音がわかる 

悩んでいる時間の中で、自分の考えに気づくことがある。たとえば「学歴やお金があるほうがいい」「人は幸せになるべきだ」「結婚して、子供を持つほうがいい」「みんなに優しく」「人に迷惑をかけてはいけない」「和を乱みださないように」「悪いことはしちゃダメ」など、普段は意識していない考えが表面化してくる。しかし、これらは本当なのだろうか? 僕がここで聞きたいのは「間違いない事実か?」ではなく、「あなたはそれでいいのか?」ということだ。 

たとえば学歴やお金。「なくても幸せになれる」と思う人もいるかもしれないが、それはまだ「あったほうがいい」という枠の中にいる。「できればあったほうがいいけれど、少なくてもいい」という発想だからだ。しかし、世の中には「なかったからこそ幸せを得られた」という人もいる。僕も学歴がないが「できれば欲しかったけど、残念ながらない」のではなく、「もういいや。大切なのは学歴じゃない」と積極的に捨てたのだ。だからこそ、得られた幸せがある。 

何かを選んだり、決断したりするときに、無意識にこうして植えつけられた価値観でよし悪しを決めがちだが、この「○○べき」という思考の枠があなたを苦しめることになる。なぜなら、それは他人の価値観であって、あなたの価値観ではないからだ。だからこそ、ときには「私はどう思うのか?」「私はどうしたいのか?」と自分の声に耳を傾けることが大切だ。それが自分らしく生きるということだし、芯しんや軸じくを持って生きるということでもある。 

しかし、「自分に染みついた他人の価値観」に気づくことは難しい。なぜなら、当たり前にそこにあるからだ。だからこそ、こういう悩みが生まれたタイミングを逃してはいけない。悩んでいるときこそ、その価値観を見直せるときなのだ。僕は、学生の頃には「いい学校に入らなければ……」、サラリーマン時代は「出世しなければ……」、社長になってからは「会社を大きくしなければ……」と、「みんなの声」に縛しばられて苦しんでいたが、悩む時間を過ごすことで自分の本音に気づき、自分の仕事や人生をよりよいものに整えることができた。

悩めば悩むほどに自分の本音に気づくことができるのだ。あなたも「いいな」や「イヤだな」という時間を過ごして本音に気づけたら、自分をごまかすことなく素直に「これがいい!」と思えばいい。我慢も遠慮もする必要はない。すべての思いが叶かなうほどには世の中は優しくないけれど、そもそも思わないことは叶わない。

3. 悩むと、自分らしくなっていく

「自分らしく」とか「個性的に」という言葉をよく耳にするが、そもそも「らしさ」や「個性」って何だろう?「個性とは他人と違うことだ」と思うのであれば、それは勘違いだ。たとえば、金髪のモヒカンで全身にタトゥーを入れれば、多くの人とは違うだろう。けれども、そういう人が集まるところに行けば、みんなと一緒だ。青色の中では赤色は「違う」けれど、赤の中にいれば、みんなと同じ。それは個性とは言わない。個性とは「みんなと違う」ではなくて、「あなたのままでいる」こと。他人との比較ではなく、自分との対話でつくられていく。あなたらしくないものを、どんどん捨てていって、最後に残ったものがあなたの個性となる。

たとえば、僕は運動が苦手なので「スポーツ」は、さっさと捨てた。毎日のルーティンや指示命令されることも苦手なので「サラリーマン」も捨てた。社員を育てるのも苦手なので「社長」も捨てた。こうして「自分」ではないものを捨て、自分が心地よく感じることを選択してきた結果、今では「真誠さんらしいですね」とよく言われるようになった。個性や「らしさ」は見つけるものではなくて、自然と自分の中から湧わき出てくるもの。そのときに大切なことは、まずは「やってみる」だと思う。いくら頭で考えても、個性は湧き出てこない。 

僕は、周囲や社会の常識で「こうするといい」「これができるといい」と言われたものには、とりあえず手を出してきた。食べず嫌いせずに「やってみた」からこそ、運動もサラリーマンも、そして社長も向いていないとわかったのだ。実際にやってみると、いろいろなことに気づける。みんなと同じようにできない。みんなと同じように楽しいと思えない……。そんな悩みと向き合うことで「これは自分ではない」と気づくことも諦めることもできる。諦めることができたからこそ、自分だと思えるものに集中したり、大切にしたりすることもできる。悩めば悩むほどに、自分らしくなっていく、とはこういう意味だ。  

4. 悩むと、毎日が楽しくなる 

ところで、あなたはゲームをしますか? 僕は子供の頃、クリアできないのが悔くやしくて、夢中になって何度もチャレンジしたことを覚えている。実はゲームと悩みは似ている。目の前に課題があり、それをクリアするためにチャレンジする。当然、はじめはうまくいかないだろう。でも、くじけずに、ときには周りの人に教えてもらいながら、何度もチャレンジしてクリアを目指す。クリアできると嬉しいけれど、終わってしまう寂しさもある。だからチャレンジする楽しさを味わいたくて、もう少し難しいものにチャレンジしていく。そして、どんどん上手になっていく。 

このようにゲームと悩みはそっくりだ。簡単にクリアできるゲームが楽しくないように、悩みもちょっとくらい難しいほうが楽しい。多くの人が悩みを避けたがるけれど、何も起きない毎日は「単調でつまらない」と逆に悩むことになる。そして、ゲームも悩みも、自分でチャレンジしないと楽しくない。人生は「明日の自分を豊かにしていく」という壮大なゲームだ。そう考えると悩めば悩むほどに毎日は楽しくなる。もちろん悩むか悩まないか、あなたが決めればいい。 

どうだろう? ここまで読んだところで、「悩みもそう悪くないなー」と思えてきただろうか。悩みはツンデレだ。なかなか本心を見せてくれないので付き合い方がわからず、大変だ。しかし、いい関係がつくられると悩みは親友になってくれて、どんどん幸せを生み出してくれるようになる。もしかすると「そんなに意識高くはいられない。私はもっとダラダラと流されて生きていたい」と思う人もいるかもしれない。それはそれでいいと思う。

しかし、何かを選択するときに「なんとなく」や「しかたなく」という理由ではなく、「この道がいい!」と納得して選んでほしい。そうでないと、人生が不平不満と愚ぐ痴ち で塗りつぶされるからだ。そして、悩みから逃げたほうがいいときもある。幸せを感じるために悩むのだから、不幸になるまで悩んでしまったのでは意味がない。「イヤだな」と思ったら、素直に逃げることも大切。今は逃げても、また「よし! やってやろう!」と思える日が必ずやってくる。  

『悩み方教室 心のモヤモヤが晴れる8つの質問』河田 真誠 著 CCCメディアハウス ¥1,650(税込)

【執筆者】河田 真誠

1976年生まれ。質問家。生き方や考え方、働き方などの悩みや問題を質問を通して解決に導く「しつもんの専門家」として、企業研修や学校で授業を行なっている。

著書に『革新的な会社の質問力』(日経BP社)、『私らしくわがままに本当の幸せと出逢う100の質問』(A-works)、『悩みが武器になる働き方』(徳間書店)、『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問』『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問ノート』『カギのないトビラ』(すべてCCCメディアハウス)など。