『コングレス未来学会議』がキッチュなアニメーションで提示する、めくるめく未来の姿。

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    女優としての旬が過ぎてオファーが激減したロビン・ライト(左)に、体型から感情まですべてのデータをスタジオに売り渡すという契約が持ちかけられます。

    主人公はかつてのスター女優、ロビン・ライト。年齢が40台半ばになりオファーが激減した彼女に、映画スタジオ“ミラマウント”がある契約を持ちかけます。その契約とは、身体や感情などあらゆるデータをスキャンしてスタジオに売り渡すこと。スタジオはそのデータを元にCGキャラクターをつくり出し、さまざまな映画に出演させることができます。脚本に文句を言わず、プロモーション活動だってさぼらない、「完璧な役者」をスタジオは手に入れるのです。一方の女優は、二度と撮影現場に行く必要がなくなりますが、どんな場でも演技をすることが禁止されてしまいます。

    『コングレス未来学会議』はこんな設定で始まります。突飛なようでいて、モーションキャプチャやCGが多用されていることを考えると、絵空事とも言えません。演じるのは役名と同じロビン・ライト。40代のシングルマザーであり、仕事より2人の子育てを優先したことなど、現実のロビン・ライトとリンクした設定が面白さを増幅させます。ハリウッドへの皮肉や小ネタがところどころにちりばめられ、ニヤリとさせられることも。物語がどんな着地を見せるのか期待が高まる中、物語の舞台はいきなり20年後に変わります。ロビンが招待されたミラマウント主催の会議が行われる場所は、「アニメ専用地域」。入り口で渡された薬を飲むと、ロビンも周囲の風景も人々も、アニメに変わります。摩訶不思議な未来の物語が本当にスタートするのは、ここからです。

    監督はイスラエル出身のアリ・フォルマン。1982年のイスラエルによるレバノン侵攻時、従軍していた自らの戦争体験をテーマにしたドキュメンタリー『戦場でワルツを』(2008年)で高い評価を受けました。この作品では、自らの失った記憶をアニメーションという形で表現しましたが、今回の『コングレス未来学会議』では、重層的かつ幻想的な不条理ワールドをキッチュなアニメーションで表現しています。起こりえるかもしれない未来のエンターテインメントの形、未来の世界の様相にハッとして、ドラッグ体験のようなアニメーションに酔いしれてください。(Pen編集部)

    ロビンを演じるのは役名と同じロビン・ライト。彼女の出世作『フォレスト・ガンプ』に言及したりと、小ネタがいっぱい。

    20年後。入り口で渡された薬を飲み、「アニメ専用地域」に入ったロビンがそこで見たものとは……。

    (c) 2013 Bridgit Folman Film Gang, Pandora Film, Entre Chien et Loup, Paul Thiltges Distributions, Opus Film, ARP

    『コングレス未来学会議』

    監督:アリ・フォルマン
    出演:ロビン・ライト、ハーヴェイ・カイテル、ジョン・ハム、ポール・ジアマッティほか
    2013年 イスラエル・ドイツ・ポーランド・ルクセンブルク・フランス・ベルギー合作映画
    2時間 配給:東風+gnome
    6月20日より、新宿シネマカリテほかにて公開。