ニコラス・ケイジの狂気がカルトな世界で炸裂する、『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

  • 文:細谷美香

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今年54歳を迎えたニコラス・ケイジが繰り広げる、血みどろの復讐劇に目が離せません。 © 2017 Mandy Films, LTD. All Rights Reserved

世界には2種類の人間がいる。ニコラス・ケイジの新作を必ず観る人間と、観ない人間だ——というニセの格言をつぶやきたくなるほど、一部に熱狂的なファンをもつ俳優、ニコラス・ケイジ。彼の暑苦しさと世界を平和にするクセの強い笑顔は世界中の人々に愛され、斜め上を行くグッズがつくられたりもしていますよね(「ニコラス・ケイジ グッズ」 で検索すると手っ取り早く幸せになれます)。

『リービング・ラスベガス』でオスカー俳優となった後に『コン・エアー』『フェイス/オフ』などの大作に舵を切り、演技派よりもアクション俳優としてイメージが強くなった彼。働き者ゆえに出演作も多く、当然当たり外れもあるわけですが、ボヤきながらも「ケイジが出ているからには観ないわけにはいかない……」という腐れ縁的な厚い支持層がいるのも事実。その証拠に彼の出演作はすべてとは言えないまでも、日本でもそれなりの本数がしっかりと劇場公開されているのです。

そんなアイドル俳優(?)の最新公開作は『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』。映画ファンにはおなじみの頼れるレビューサイト、ロッテントマトで90%以上のフレッシュ(評価)を得ていると聞いたときには疑ってしまいましたが、実際にこの映画を観て納得しました。通常のケイジ映画はケイジの荒唐無稽な暴走と本気すぎる熱演に依存していることがほとんど。けれども『マンディ』はケイジの狂気のみならず、映画そのものが狂気100%の成分でできているのです! 

彼が演じるのは愛する女性マンディと人里離れた場所で暮らしている男、レッド。ある日、カルト集団を率いる男によって、マンディは目の前で焼き殺されてしまいます。怒りに燃えたレッドはお手製の物騒すぎる武器を手に復讐の鬼と化しますが、彼の目の前には謎のバイク軍団が現れます。

『ウィッカーマン』では生贄として燃やされ、『ゴーストライダー』ではバイクに乗りながら燃えすぎて焦げたケイジが、今回は炎に包まれてしまった愛する人のために、とことん戦っています。キング・クリムゾンの「スターレス」が流れる不穏な幕開け、突然挿入されるアニメーションやマカロニチーズを吐くクリーチャー、何をしでかすかわからない登場人物たちと悪夢的で魅惑的な色彩……。もはやアートと呼びたくなるカルトな世界とニコラス・ケイジとの素晴らしき相性のよさを、ぜひ劇場で体感してください!  

カルト集団を率いる男を演じるのは、イギリス人俳優、ライナス・ローチ。 © 2017 Mandy Films, LTD. All Rights Reserved

監督は『ランボー/怒りの脱出』のジョルジ・パン・コスマトスの息子。製作には俳優のイライジャ・ウッドも名を連ねています。 © 2017 Mandy Films, LTD. All Rights Reserved

『マンディ  地獄のロード・ウォリアー』

監督:パノス・コスマトス
出演:ニコラス・ケイジ、アンドレア・ライズブロー、ライナス・ローチほか
2017年 ベルギー映画 2時間1分
11月10日より新宿シネマカリテほかにて公開。
映倫:R15
www.finefilms.co.jp/mandy