人間とA.I.は共存できるか――を考える間もなくストーリーが展開して爆音が響く、圧倒的エンターテインメント。

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    A.I.(人工知能)と人間の関係をテーマにした映画、きっといくつも思い浮かぶことと思います。A.I.とは頼れる相棒であったり、ときには人々を恐怖に陥れる存在だったり、あるいは恋愛対象だったり。けれどもニール・ブロムカンプ監督が新作『チャッピー』で描くA.I.は少々ユニークです。これまで、人間と同等かそれ以上の頭脳をもつ存在として描かれたり、成長の過程は省かれていることが多かったA.I.が、赤ちゃんのように真っさらな状態で誕生し、驚くべき速さで成長する姿が描かれるのです。

    A.I.の名はチャッピー。生まれは南アフリカのヨハネスブルグ。犯罪撲滅のため、警察が大量に導入したチタニウム製のロボット「スカウト」の1体です。あることをきっかけに、チャッピーは人工知能を獲得し、とてつもない騒動の中心となります。

    『第9地区』で鮮烈な長編映画デビューを飾ったブロムカンプ監督。初作品では人種差別、2作目の『エリジウム』では経済格差、そして『チャッピー』ではA.I.を物語に取り入れていますが、どの作品も荒唐無稽さとリアリティ、アクションとドラマのバランスが絶妙です。『チャッピー』の設定は2016年。あと半年後(!)ですが、映画で描かれることは妙なリアリティがあり震えます。一方で、ロボットを造り運用するという重責を担う軍需企業なのに、セキュリティが甘すぎるとか突っ込みは満載です。でもそんなことは、ストーリーの面白さと暴力と爆弾で、吹き飛ばしてくれます。

    カオスな物語に拍車をかけるのがブロムカンプ監督の故郷でもあるヨハネスブルグ。当初は舞台をアメリカにすることも検討していたようですが、『ロボコップ』が作られた時代のデトロイトならいざしらず、いまのアメリカはちょっと健康的すぎたのかもしれません。『第9地区』の舞台でもあるヨハネスブルグは、『チャッピー』を二倍も三倍も面白くしています。(Pen編集部)

    監督:ニール・ブロムカンプ
    出演:シャールト・コプリー、デーヴ・パテル、ニンジャ、ヨーランディ・ヴィッサーほか
    2015年 アメリカ映画 2時間 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
    5月23日より、丸の内ピカデリーほかにて公開。
    www.chappie-movie.jp