本屋でアートに目覚めた、赤毛のクリエイター

本屋でアートに目覚めた、赤毛のクリエイター

撮影:熊谷勇樹 文:佐野慎悟

vol.37
鈴木淳子
アートディレクター/アーティスト/ヘアカラーモデル

夕陽が差し込む窓際に立つと、トレードマークの赤毛が美しいグラデーションを描く。透き通るような白い肌に黒い服と赤毛がよく映える。

アートディレクター、アーティスト、ヘアカラーモデルと、さまざまな肩書きを掲げる今回のバズ美女は、ボブスタイルの赤毛がアイコニックな鈴木淳子さん。東京藝術大学大学院在学中に始めたセルフポートレートを載せるブログが人気となり、10年前にブロガーとしての活動を始めた鈴木さんはいわばインフルエンサーの草分け。インスタグラムもなければインフルエンサーという言葉すら使われておらず、日本ではブログが流行り始めたばかりだった時代に、企業やメディアと協業しながらインフルエンサー・マーケティングの原型をつくり上げてきた。

「最初は雑誌『スウィート』の専属ブロガーとして活動を始めて、“1万円コーデ”を提案したり、ブランドの展示会に行ってレポートしたり、編集部や広告代理店とアイデアを出し合いながら、いろんな見せ方を提案しました。その時点で、いまのインフルエンサーマーケティングの原型は出来上がっていましたが、全然仕事になりませんでした。だからいくつかの仕事と並行してではありましたが、当時は海外でブロガーの影響力がかなり高まってきた時期だったので、日本にもいつか必ずこういう時代がくると信じて、地道に活動を続けました。気がつけば10年が経ち、私と一緒にブッキングされる方たちが10歳以上年下ということも多くなってきました。若い子たちがこういう仕事に夢を抱いてたくさん出てきて、自分の個性を活かして活躍しているところを見ると、地道に頑張ってきてよかったなって、なんだかこれまでの努力が報われた感じがするんです。最近は、おばあちゃんになるまでやっちゃおうかなって思っています」

若い世代から刺激を受けていると語る鈴木さんだが、10年間仕事を続けながらますます存在感を高めている彼女の姿は、逆に若い世代へも、多大な勇気と励みを与えていることだろう。

東京藝大在学中から自身のブログ「カワイイラボ」で活動していたが、徐々にインスタグラム関連の仕事の比重が増えていった。

若い世代のインフルエンサーは、企業案件の仕事を斡旋して取り仕切るキャスティング会社に所属することが多いが、鈴木さんはそういったシステムのない黎明期からひとりで活動してきた。いまでもクライアントからダイレクトに仕事を受注し、それぞれのプロジェクトに対応している。

この洒落た内装の開放感あふれる場所は、鈴木さんの自宅のリビングルーム。彼女のインスタには、ここで撮られたハイセンスなビジュアルが数多く投稿されている。

鈴木さんの家系は、本の街として知られる神保町で書店を経営する一族。曾祖父が一誠堂書店、祖父が書泉を創業し、鈴木さんも幼少期を神保町で過ごした。

小さい頃から本に囲まれて育った鈴木さんが、写真集や、アート集、雑誌、漫画などを通して、本の世界に没頭していったことはいうまでもない。

取材場所を自宅から神保町の街に移し、1903年に鈴木さんの曾祖父、酒井宇吉氏が創業した一誠堂書店へ。この鉄筋コンクリート造のビルは、関東大震災を含む2度の火災を経て1931年に建てられた。

「一時期、実家の目の前が集英社だったことがあったんです。夜中まで明るい編集部の様子や、早朝にロケバスが止まっていたりベストセラー本のポスターが貼られていたりする光景を見ていると、カルチャーをつくり出している雰囲気がひしひしと伝わってきて、メディアの世界に憧れを抱くようになりました」と鈴木さん。そんな経験もあり、クリエイティブな仕事につくために、東京藝大へと進学する。

一誠堂書店の2階には、1800年代から現代まで、海外から集められた古書がところ狭ましと陳列されている。写真やイラストがメインのビジュアルブックや古い図鑑などは、ただ眺めているだけで美しい本の中の世界に没入できる。

少女時代の鈴木さんも、こんな風にいつまでも、本の中にある美しい写真やイラストを眺めていたのだろうか?  想像力豊かな感性や、アーティスティックなセンスはここで磨かれていったのかもしれない。

古びた書店の中で聞こえてくるのは、鈴木さんがページをめくる微かな音だけ。大好きな馬や花のイラストは、新たなインスピレーションを与えてくれる。

Q1
普段どのようにSNSを活用していますか?
A
仕事で使うのと情報収集。
Q2
好きな食べ物は?
A
アントニオ南青山本店の「仔牛のカツレツミラノ風」、松翁の「ざるそば」、中華そば 竹むらの「味玉中華そば」、スパザウルスの「たらこスペシャル」、ロサンゼルスにあるRepubliqueの「芽キャベツのサラダ」、ニューヨークにあるMIMIの「タルタル」。
Q3
よく行くお店は?
A
世界一おいしいコーヒーが飲める恵比寿の「ヴェルデ」。
Q4
趣味は?
A
チェス、乗馬、温泉。
Q5
好きな映画は?
A
『ユニコ』。あとは映画になる前のアニメも見たりしていた『ルドルフとイッパイアッテナ』。
Q6
好きな音楽は?
A
切れ味がいい音や声、センシティブだけどパワフルなものが好きで、特に女性のシンガーを聴くことが多いです。クラシックも聞くし、現代ジャズにハマってたこともありました。 J-POPなら椎名林檎、宇多田ヒカル。制作する時や集中したい時はビョーク、坂本龍一、ルドヴィコ・エイナウディ。 ドライブする時はレディー・ガガ、デュア・リパ、アヤ・ナカムラ、ビリー・アイリッシュなどを聴いて、ノリノリになったり……。 時代をつくる人から学ぶことが沢山あるので、本当にジャンルを問わず聴きます。
Q7
理想的な休日の過ごし方は?
A
たくさん寝る。自分のために物づくり。お散歩。
Q8
好きな男性、もしくは女性のタイプは?
A
「美学」のある人。
Q9
愛用しているカメラの機種は?
A
NIKON D800、Google Pixel 4
Q10
最も尊敬する人は?
A
たくさんいらっしゃいます! あえてひとりというなら、ヨハネス・グーテンベルグ。
Q11
自分らしくいるための、あなたのモットーは?
A
この質問をされて気づいたけど、昔はすごく考えていたんですが、いまは特にモットーなど気にせず暮らしています。自分を信じる。直感を信じる。諦めない。
Q12
逆境に陥った時にはどうやって立ち直る?
A
よし、次! 忘れるために、次に没頭する。自分が納得できることをやったら、嫌なことなんて気にならなくなるでしょ?
Q13
仕事で得た最大の教訓は?
A
「君子危うきに近寄らず 」っていうと、まるで自分が君子なのかって話で恐縮ですが、 兎にも角にも、察知力って大切だなと。
Q14
世の中にもっと増えたらいいのにと思うものは?
A
美とファンタジーと おいしいごはん.
Q15
いままでSNSで反響が大きかった投稿は?
A
2015年、ブルーのロングヘアだった時。フェイスブックで3.6万のいいね! が付いて、247件シェアという奇跡。“バズった”って思いました。
Q16
SNSでなにか失敗をしたことは? そこから得た教訓は?
A
失敗とは違うかもしれないけど、一喜一憂しないこと。豊かな気持ちでいることをキープするようにしています。
本屋でアートに目覚めた、赤毛のクリエイター

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