80年代のヒットソングが彩る、ナイーブな野心家の心情。

  • 文:綿谷エリナ

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『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』

ジェームズ・コックス

80年代のヒットソングが彩る、ナイーブな野心家の心情。

綿谷エリナラジオパーソナリティ

金融の専門家を『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴートが演じ『キングスマン』シリーズのタロン・エガートンがプロテニス選手に。ハリウッドで存在感を増す若手俳優が初共演を果たし実在した投資グループのスキャンダルを映画化。© 2017, BB Club, LLC. All rights reserved.

最後まで目が離せないクライム・サスペンスだ。舞台は、1980年代のロサンゼルス。この街で、わずか1年足らずで爆発的な成長を遂げた投資グループがいた。その名も「ビリオネア・ボーイズ・クラブ」。しかし、その実態は投資家から金をだまし取って欲望の赴くままに豪遊することを繰り返す社交クラブだった……!
この映画は、彼らが実際に起こした前代未聞の詐欺・殺人事件を描いている。未熟な天才たちを好演しているのは、人気若手俳優のアンセル・エルゴートとタロン・エガートンのふたりだ。その脇を、ドラマ『ハウス・オブ・カード』でもお馴染みの名優ケビン・スペイシー、そして、エマ・ロバーツが固める。
ストーリーは、エルゴート演じる冴えない金融マンのジョーとエガートン演じる高校の同級生ディーンが偶然再会するところから始まる。
ふたりは、ビバリーヒルズの友人たちを口説き1万ドルの融資を元手に少しずつ詐欺を働き、騙し取った軍資金を元手に「ビリオネア・ボーイズ・クラブ」を設立。さらに、東のウォール街で著名な敏腕トレーダーのロンからも巨額の融資金を出させることに成功する。実態を知らない出資者は、彼らの仕事ぶりに熱狂する一方だった。しかし、これですべてが順調と思われた矢先に裏切りにあい、事態は急変していく……。
のし上がる為に重ねてきた嘘に苦しむ、野心家でありながらも繊細でナイーブなジョーの心情を彩る80年代のヒットソングにもぜひ耳を傾けてほしい。ディーンや仲間とのつながりは嘘や騙し取った金だったかもしれないが、美しい恋人シドニーへの想いは本物だったのだろう。トーキング・ヘッズの名曲『ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス』の旋律が、切なくも美しく響くのが印象的な一作だ。

『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』
監督:ジェームズ・コックス
出演:アンセル・エルゴート、ケビン・スペイシ—ほか 
2018年 アメリカ映画 1時間48分 11月10日より新宿武蔵野館ほかにて公開。
http://bbc-movie.jp