性別を超えた試合を戦う、彼女の心意気が気持ちいい。

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    『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

    ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン

    性別を超えた試合を戦う、彼女の心意気が気持ちいい。

    伊藤さとり映画パーソナリティ

    1973年当時、女子選手の賞金は男子選手の8分の1。こうした現状に自分らしい方法で異を唱える主人公を『ラ・ラ・ランド』の好演も記憶に新しいエマ・ストーンが爽やかに演じた。男性優位主義の選手に扮したスティーブ・カレルの演技も見もの。©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

    「仕事も家庭も両立させたい」。男女格差をものともせず、活躍する女性が増えた。それは日本どころかハリウッドでも同じだ。ディズニーでさえ、王子様が見つけてくれるのをじっと待っているだけのプリンセスから、父親の言いつけを破り、外の世界に飛び出して王子様を探しに行くアリエル(『リトル・マーメイド』)を登場させるまでになった。1989年のことだった。 
    時代は変わりつつある。男性ファンが多い『マッドマックス』シリーズの最新作では、女戦士フュリオサが大活躍した。専業主婦から働く女の時代になったいまだからこそつくられた今作は、1973年が舞台。世界中が注目した男対女のテニスマッチが題材だ。 
    当時、男性と女性テニスプレイヤーでは賞金格差がひどく、29歳の女子世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングは、男女平等を求め、テニス協会を脱退し、女性選手たちと協会をつくる。これに対して、恰好の話題づくりになると考えた元チャンピオンで55歳の男性選手ボビー・リッグスは、キングに対決をけしかけるのだ。 
    劇中、「女はキッチンと寝室にいればいい」という言葉が飛び出す。この映画の気持ちいいところは、キングが、その言葉を聞いても涼やかな顔で切り返し、専属デザイナーによるテニスウエアを纏い、ヘアスタイリングも整えて、テニスコートに立つことだ。〝外見も内面も自分の魅力を最大限に出す〞彼女の姿から、男性も女性も競い合わず、ともによいプレーをしようという心意気が感じとれる。 
    映画は、愛のカタチは人それぞれであり、誰かの支えがあって、人は才能を活かせるということも伝えていた。『リトル・ミス・サンシャイン』を生み出したデイトンとファリス監督夫妻の新たな愛の結晶は、見る人すべてを虜にし間違いなく、心に大きなウェーブを起こすだろう。

    『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
    監督:ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン
    出演:エマ・ストーン、スティーブ・カレルほか
    2017年 アメリカ映画 2時間2分 7月6日よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開。
    www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes