愛は死んだのか・そうでないのか、 会話のきっかけにしてほしい。

  • 文:鈴木宏和

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『ラヴ・イズ・デッド』

チャーチズ

愛は死んだのか・そうでないのか、 会話のきっかけにしてほしい。

鈴木宏和音楽ライター

英グラスゴー発、艶と憂いと透明感を併せ持つ歌声が魅力の紅一点、ローレンと、マーティン、イアンからなるエレクトロ・バンドが、通算3枚目の新作をリリースする。今回はセルフ・プロデュースという縛りを解き、グレッグ・カースティンをプロデューサーに起用。最近ではリアム・ギャラガーにフー・ファイターズと、ロックの大物の新作を続けて手がけた辣腕だ。「次にどこに進むのか、何に挑戦するのか考えた時、外部の人と絶対やらないと決めてしまう前に、一度はやってみないとダメなんじゃないかと思って」 

ローレンはそう語る。「でも実績で決めたわけではない」と続けるのは、自身もプロデューサーのマーティン。「彼はアーティストの音をすごくわかってくれて、一緒に作り上げていくスタンスの人。深い理解のもとに、良さを最大限に引き出してくれるんだ」 

これが新たな刺激とクリエイティヴィティをもたらしたのだろう。生ドラムの導入など、イアンいわく「自然発生的に思いついたことを何でもやってみた」今作には、明と暗、光と影、オプティミズムとペシミズムといった両極に振れる生身の感情を、精緻かつ彩り豊かに描く美曲が並ぶ。真価が問われると言われる3枚目にふさわしい、極めて高純度のポップ・アルバムだ。〝愛は死んだ〞を意味するアルバム・タイトルについては、「その通りだと思うこともあれば、いやそんなことはないと思うこともあって」とローレン。「ぱっと言葉を投げた時に、『これは何なんだろう?』って考えたり、会話が始まったりするきっかけになればと思って、このタイトルにしたの」 

そう言って笑顔で手をやった彼女の胸元には、〝Love Is Dead〞とかたどられたネックレスが光っていた。形のない愛を生かすも殺すも、信じるも信じざるも、それは自分次第ということなのかもしれない。

2013年9月、『ザ・ボーンズ・オブ・ワット・ユー・ビリーヴ』でデビューしたイギリス・グラスゴー出身の3人組バンド。全英チャート初登場9位、全米チャート12位(インディー1位)を記録した。18年7月にはフジロックフェスティバルに出演決定。

『ラヴ・イズ・デッド』

チャーチズ
HSE-6778
ホステス・エンタテインメント
¥2,689(税込)