本格ブレイクを確信させる、たまらなく沁みるジュリアン・ベイカーの歌。

本格ブレイクを確信させる、たまらなく沁みるジュリアン・ベイカーの歌。

文:鈴木宏和

1995年、アメリカ・テネシー州生まれ。USインディーを代表するシンガー・ソングライター。2015年にリリースした『スプレインド・アンクル』で注目を浴びた。18年にフィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダッカスとボーイジーニアスを結成。

【Penが選んだ、今月の音楽】

いわゆるコロナ疲れに対する、自分の内なる反動というものなのだろうか。素晴らしいリリース作品が多かったこともあるのかもしれないが、気が付けば内省的な、フォーキーな音楽に惹かれるようになっていた2020年だった。実際にステイホームの環境下でリモート制作された、パンデミック・アルバムとも呼べるテイラー・スウィフトのサプライズ2連作には、聴くほどに慰撫されるような安らぎを覚えたし、フィービー・ブリジャーズの新作における、流麗なサウンドと共鳴する歌の凜とした強さは、聴くたびに胸に突き刺さってきた。

そして、ジュリアン・ベイカー。くしくも、フィービー・ブリジャーズとはボーイジーニアスとしてバンド活動をしている盟友。まさかのパンデミックが続く21年に、彼女が世に送り出すニュー・アルバムが、またたまらなく沁みるのだ。

レコーディングは2019年末から20年1月までということだから、コロナ禍以前になるが、セルフ・プロデュースでほとんどの楽器をジュリアンひとりで演奏している本作は、いまとなっては“その後”の世界の行く先と、人々の心の行く先を予見していたかのように思えてくる。

前作まで入っていなかったベース&ドラムをはじめ、音数が増えたサウンドは彩り豊かでありながら、絶妙にバランスを保ちつつギター弾き語りを基調とすることで、静謐で美しいアンサンブルとグッド・メロディが際立ち、孤独に寄り添う珠玉のシンガー・ソングライター作品に仕上がっている。そして、孤独に寄り添いながらも、繊細さの中に強靭な意志を宿したジュリアンの歌が、一緒に立ち上がろう、ここから飛び出そうと手を差し伸べるように、内省からの解放へと誘うのだ。

本格ブレイクを確信させる、新たなる時代の名作が誕生した。


『リトル・オブリヴィオンズ』ジュリアン・ベイカー OLE-1632CDJP ビート・レコーズ ¥2,420(税込) 2/26発売

本格ブレイクを確信させる、たまらなく沁みるジュリアン・ベイカーの歌。
Feature Product ルノー キャプチャーで巡る、パリのこだわり食材店。
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