近年になるまで世界のどこにも直営店を持たず、孤高の道を歩んできた1951年創業のカナダグース。そのブランドが長年に渡り日本でもトラッド、アメカジ、アウトドアらを好む人々を中心に支持されてきたのは、極寒の地を有するカナダで生まれた、マイナス数十度の気温に耐えうるプロスペックのアウターの存在が理由だ。独自開発のポリエステルコットンを表地に使った味わい深いダウンウエアが、アドベンチャーへの憧れの象徴となった。その知名度が一般層にまで広がったのは、スリムに簡素化した街で着やすい「ジャスパー パーカ」が2012年に登場したのがきっかけ。ナチュラルスタイルの流行とも合致して瞬く間に人気が広がり、カナダグースは「誰もが1着はほしい」防寒アウターのポジションを確立していった。
その彼らが現在取り組んでいるのが、全世界のファッション産業の急務とされるサステイナビリティを前提にしたモノづくりである。20年4月の声明では、SDGsをサポートする主に5つのコミットメントが発表された。その内容は、「25年までに温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成」「22年に動物の毛皮(ファー)の新規仕入れを終了し、再生利用された毛皮だけを使う製造プロセスの実現」「ダウンやフェザーを採取する動物に配慮した、レスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)の21年中の完全承認」「持続可能なサプライチェーンに基づく製品を認証する、ブルーサイン(Bluesign®)の25年度の90%達成」「カナダグースが管理・所有するすべての施設でのプラスティックの使用廃止」。これらを達成すべく、社を上げて取り組んでいる。
我々も着る服を選ぶ時、ブランドの姿勢を問うことが大切になった。意味のある服を手に入れ、長く愛用して資源を無駄にせず廃棄物を減らすことが望まれる。こうした一人ひとりの意識改革こそが、ファッション産業を持続可能な未来へと導く。