伝統と現代の表現を模索する、8人の陶芸作家によるグループ展が開催中。

    Share:

    東京・渋谷の「8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery」で、8人の陶芸作家によるグループ展が開催中です。出展作家は、岡崎裕子、川端健太郎、桑田卓郎、五味謙二、アダム・シルヴァーマン、田淵太郎、新里明士、吉村昌也。陶芸の長い歴史を受け継ぎながら、独自の表現と技法を模索し続ける、年代や性別がも異なる8人の作品が介し、現代における工芸として、アートとしての陶芸の在り方が浮かび上がる展示となっています。

    岡崎裕子は、イッセイミヤケでの勤務を経て陶芸家・森田榮一に弟子入り。現在は横須賀に工房を構え、羽黒トンボなど自然をモチーフにした器を、特徴的な白いマット釉で焼き上げ、生活に馴染む作品として制作しています。

    ガラス釉などの表現を用いて、大胆で独創的な造形が、見る者の感性に訴えかけるようなオブジェ作品を生み出す、川端健太郎は、2001年岐阜に築窯し、パラミタ陶芸大賞展で大賞を受賞した作家。

    8人の中で最も若い1981年生まれの桑田卓郎は、梅華皮(かいらぎ)や石爆(いしはぜ)など、陶芸の世界で珍重されてきた個性的な表現、素材感を独自のポップな色彩感覚で作品に昇華。その作品は、ニューヨークやブリュッセルなど海外でも高評価を受けています。

    焼成という陶芸特有の工程に魅せられ、早稲田大学を卒業後、沖縄で壺屋焼を学んだ五味謙二は、もみ殻に埋めて炭化焼成することで得られる風合いと相まった、独特の個性を放つ作品を模索しています。

    ロサンゼルスで作陶を続けるアダム・シルヴァーマンは、大学で建築とアート、デザインを学んだ後、建築家を経て、1991年にファッションブランドX-LARGEを共同設立するなど異色の経歴を持った作家。日本の民芸にも高い関心を持ち、素材となる土や釉薬の質感を活かした独自のテクスチューが、抽象化された自然を感じさせる作品を生み出しています。

    出身地の香川に2007年に薪窯を築窯し、白磁を制作してきた田淵太郎は、一般的にはより白いことが求められる白磁に、炎がつくり出す窯変(焼成により予期しない釉色や釉相が生まれること)を表現として取り込んだ作品が特徴的。

    川端、桑田と同じ多治見市陶芸意匠研究所で陶芸を学び、岐阜に工房を構える新里明士は、白磁に穴を開け、穴に透明の釉薬を埋めて焼成することで、その光を透かす姿が蛍に例えられる「蛍手(ほたるで)」という手法を模索する作家。

    本展で最も陶歴の長い1938年生まれの吉村昌也は、1974年に茨城県笠間に築窯。自身の名をとった「吉村粉引」とも呼ばれる、独自の造形に青白く輝く肌などが世界的にも認められる作家。その作品は大英博物館などにも収蔵されていますが、使い勝手の良さから世界中に愛好家を持つ稀有な存在です。

    本展の開催は8月17日(月)まで、ぜひ足を運んで、陶芸が見せるさまざまな表現を生で感じてみてはいかがでしょうか。(高柳 圭)

    上段写真:焼成という陶芸特有の工程を独自の視点で取り込む五味謙二。 五味謙二 ©Kenji Gomi

    陶芸の世界で珍重される梅華皮や石爆などの表現を大胆に用いた桑田卓郎の作品。 桑田卓郎ⒸTakuro kuwata

    吉村昌也による、「吉村粉引」とも呼ばれる、独自の造形に青白く輝く肌が特徴的な作品。 吉村昌也ⒸMasaya Yoshimura

    透明の釉薬を用いて、光を透かす「蛍手(ほたるで)」という手法を用いる新里明士の作品。 新里明士ⒸAkio Niisato

    ガラス釉を表現を用いた独創的な造形が特徴の、川端健太郎による作品。 川端健太郎ⒸKentaro Kawabata

    白いことが基本の白磁に、炎がつくり出す窯変を取り込む、田淵太郎の作品。 田淵太郎ⒸTaro Tabuchi

    岡崎裕子の作品は、生活に馴染む白いマット釉で焼き上げたもの。 岡崎裕子ⒸYuko Okazaki

    『陶芸家8人展』
    岡崎裕子、川端健太郎、桑田卓郎、五味謙二、アダム・シルヴァーマン、田淵太郎、新里明士、吉村昌也

    会場:8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery
    開催期間:〜2015年8月17日(月)
    開館時間:11時〜20時
    料金:無料

    http://www.hikarie8.com/artgallery