滴り落ちる美しいバラに注目! ファッション写真を革新し続けるニック・ナイトの日本初個展のテーマは‟植物”です。

  • 写真・文:中島良平

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展示作品から。(左)© Nick Knight, Rose I, 2012 (117.47 x 76.2 cm) (右)© Nick Knight, Rose VI, 2012 (117.47 x 76.2 cm)

1980年代から山本耀司やジョン・ガリアーノなどのコレクションを撮影し、ファッション・フォトグラファーとして大きな影響力をもつニック・ナイト。意外にも日本では初となる彼の個展『Still』が、原宿のキャットストリートに面するギャラリー「ザ・マス」でスタートしました。

会場は4つの空間に分かれており、植物をモチーフとする作品3シリーズと、コム デ ギャルソンのために制作した映像の4作品とで構成されています。大英自然史博物館に収蔵された600万点もの植物標本と3年半かけて向き合い、ドローイングを描くようにして植物の多様な造形と色彩の美しさを画面に閉じ込めた『Flora』。バラを撮影した写真にペインティングを施し、写真と絵画の境界を消失させようと試みた『Roses, Photo Paintings』。17世紀オランダの静物画のスタイルを現代に甦らせたいと考え、被写体として選んだバラの花との微妙な角度や距離の調整、光の具合などを見極めながらiPhoneで撮影を続けた『Roses From My Garden』。さらに、バラの花の色の滴りや炸裂を動画で表現した映像作品『Roses, Photo Paintings』も上映されています。

自己模倣とは無縁に新たな表現を追い求め、チャレンジを続けるナイト。自身の直感的な審美感覚に忠実な彼の作品は、コンセプチュアルな知性と美を見極める感性とが高い次元で融合しています。本展に出品された植物の作品と向き合えば、彼がファッション写真で表現してきた詩的な描写やディテールへのこだわり、ハーモニーと不協和音を使い分ける感覚、といったものの根源を感じられるはずです。

原宿のキャットストリートに面した、ザ・マスの「ギャラリー1」の入り口。

ギャラリー1の広いスペースに展示されているのが『Roses, Photo Paintings』。

ギャラリー1の奥の部屋では、コム デ ギャルソンのオー・ド・パルファム『フロリエンタル』のコンセプト映像が上映されています。

ギャラリー1の脇の階段を上ると「ギャラリー2」。ここでは『Flora』を展示。

ギャラリー2の展示には、写真集『Flora』(1997年)より、植物の多様性を感じられる作品が選ばれました。

「ギャラリー3」に展示された『Roses From My Garden』。ナイトは一枚の写真を完成させるために、3時間以上シャッターを切り続けることもあるといいます。

ニック・ナイト展『Still』
開催期間:2018年11月10日(土)〜12月16日(日)
開催場所:The Mass
東京都渋谷区神宮前5-11-1
TEL:03-3406-0188
開廊時間:12時〜19時
休廊日:火、水
会期中入場無料
http://themass.jp