写真家・中平卓馬の知られざる転換期とは? 44年の時を経て再現される大型作品『氾濫』は必見です。

  • 文:及位友美

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『氾濫』から。Takuma Nakahira © Gen Nakahira Courtesy of Osiris

中平卓馬の『氾濫』展が、2018年3月10日から4月14日まで渋谷のギャラリー「CASE TOKYO」で開催されます。15年に惜しまれつつこの世を去った写真家の中平卓馬。本展では、1974年に東京国立近代美術館の『15人の写真家』展で彼が制作・発表した『氾濫』を再現するインスタレーションが見られます。

中平は、雑誌『現代の眼』の編集者を経て、60年代半ばから写真を撮り始めた写真家です。68~69年には森山大道らとともに写真同人誌『プロヴォーク』を刊行したことでも知られます。初期作品は、粒子が粗くピントの定まらない、‟アレ・ブレ・ボケ”の表現が特徴でしたが、73年の評論集『なぜ、植物図鑑か』で、これまでの写真を全否定。主観を排し、ありのままに物を捉える‟図鑑”のような写真に意味があると論じるようになりました。そんな転換期に、初めて美術館で展示されたカラー作品が『氾濫』です。

今回の展覧会で再現される『氾濫』は、48点のカラー写真からなるインスタレーションの縮小版です。そこに写されているのは、壁を這う蔦、路上のマンホール、大型トラックのタイヤ、地下鉄構内……。彼が日々の生活の中で遭遇したこれらのシーンは、都市空間の無気味な断片のように見えるかもしれません。

これまであまり注目されてこなかった転換期の作品『氾濫』にフォーカスした本展は、展覧会と同名の作品集の刊行に合わせ企画されました。会場では、出来上がった写真集を分解して貼り合わせる独自の手法で、インスタレーションを構成しています。制作から40年以上を経て再現される『氾濫』を、改めて読み解く機会になりそうです。

『氾濫』から。Takuma Nakahira  © Gen Nakahira Courtesy of Osiris

『氾濫』から。Takuma Nakahira  © Gen Nakahira Courtesy of Osiris

『氾濫』展示風景 1995年 東京国立近代美術館

中平卓馬『氾濫』展

開催期間:2018年3月10日(土)~4月14日(土)
開催場所:CASE TOKYO
東京都渋谷区渋谷2-17-3渋谷アイビスビルB1 
TEL:03-6452-6705
開廊時間:11時~19時 
会期中入場無料
休廊日:日、月、祝
http://case-publishing.jp/space.html

※オープニング・レセプション:3月10日(土)18時~20時
※関連トークイベント:3月24日(土)17時~18時30分、参加費¥1,000(税込)、要予約