パーソナルな写真がもつ力を見せつける、長島有里枝の初の大規模個展が開催中です。

  • 文:坂本 裕子

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『Self-Portrait (Brother #34)』 1993年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

挑発的なポーズのセルフポートレートや家族の日常を切り取った作品で、社会と自らとの関係を見つめてきた長島有里枝。大学在学中のデビューから24年、彼女の初の大規模個展『長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。』が東京都写真美術館で11月26日(日)まで開催されています。

200点以上の作品で追うその足跡は、そのままに彼女の人生を語っています。自らのパートナーを写した作品は、親密な距離感であるがゆえ、撮影者が対象からファインダー越しに「視られている」かのような、逆転現象が興味深いところ。また、パリでお針子になりたかったという母と共同制作したテントとタープのインスタレーションには、写真にとどまらない彼女の表現の幅の広さに驚かされます。さらに、肖像権の問題で気軽に写真が撮れなくなったいまも、あえて撮り続けている街頭でのポートレートでは、人間関係に不器用な彼女ならではの社会との関わり方を提示しています。

これらのきわめてパーソナルな作品は、見る者に深い余韻をもたらします。それは、真摯で飾らない眼差しの中に、鋭い批判精神や心細さ、切なさ、愛を感じられるからかもしれません。「自分がしっくりくる表現手段を探していきたい」と語る長島。これからがさらに期待される作家です。その皮肉と愛のスパイスを、この機に味わってみてください。

『Tank Girl』 1994年 発色現像方式印画

『Matt in Vertical Ramp』 1996年 ゼラチン・シルバー・プリント

「not six」より 2000年 発色現像方式印画

『わたしたちの部屋(朝)』「SWISS」より 2007年 発色現像方式印画 東京都写真美術館蔵

初期の作品から最新のインスタレーションまで 2階展示風景から

「長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」

開催期間:2017年9月30日(土)~2017年11月26日(日)
開催場所:東京都写真美術館
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
開館時間:10時~18時(月~水)10時~20時(木、金)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月
観覧料:一般¥800(税込)
http://topmuseum.jp